一万年のハロウィン

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   *  その頃、恵介は帰宅途中の娘をファミレスに連れて行って、チョコレートパフェを御馳走すると、手を合わせた。  「頼む! とんでもない犯人が現れたんだ! このままじゃ大勢の罪もない人々が不幸になる!」  「またぁ~」  景子はアルバイト渋りながら、(国と伯井さんの違いって、大差ないんじゃないの?)と、考えていた。  で、それを口すると、恵介は「国を信じよう、と、言うか、今は人間が愚かでないことを信じるしかないだろうが、たしかに我々は大きな間違いをしていたんだろう。だがそれを理由に赤の他人と無理心中なんて許されるわけないだろうが! 人類は悔やんでも絶望してはならないんだ! お父さんには科学のことはわからないが、なにか放射能を無害にできる方法が発見できるかもしれないじゃないか、それまで我々は過去の誤りと悪戦苦闘をしなくちゃいけないんだ!」と、答えた。  「それって根拠のない楽観論だよ」  熱く語る恵介に対して、景子の視点はあくまで冷めていた。  「じゃあ、絶望してりゃいいのか!」  「そうは言わないけどさ、悪戦苦闘するのって、子供のわたしらの世代だよね、そしてあたしが生むであろう子供、つ・ま・り・お父さんの孫の世代も、その次も苦労しっぱなしじゃんか」  「うっ!」と、恵介は言葉を詰まらせた。  「あ~あ~、トランプでババつかんだ気分だね」  そう言いながら、景子はG1が伯井によって街へ送りだされる前まで時間を巻き戻した。   *  それから半世紀が経過した。  ここは地下三百メートル。  G1は棺のようなタイムカプセルで眠る。  かれが解体した瓦礫と共に眠る……。  予備電源が稼働して再び目覚める日があるとすれば、一万年後になるだろう。  その日、人類が存在しているかは、おそらく神しかわからない。
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