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左手に持ったジャージからは血が滴り落ち、僕の後ろに歩んだ痕跡を残す。
右手に持ったスマホからは通話が切れたことを示す機械音が鳴り響く。
中庭へと歩く僕は雨に濡れながら、規則的に地面の水を踏みつけていく。
彼女の後ろ姿を見つけても、僕は速さを変えずに歩き続けた。だんだんと近づく距離に、僕は胸の高鳴りを抑えられない。
そしてお互いの鼓動を感じられるほど近づき、彼女の耳元に顔を寄せると静かに口を開いた。
「欲しいんです、あなたが」
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