月暈

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僕が腰を下ろしたのは、渡り廊下の横の中庭に置かれたベンチ。 渡り廊下といっても日頃ここを使用する生徒は少ない。 校舎の一番端にあり、どこの教室に行くにも不便だからだ。それに屋根がない為、雨の日はことさら誰も通らない。 ベンチに残された水滴が僕のズボンに染みていくのがはっきりとわかる。不快感に顔を歪ませると、僕の腹が鳴った。 しかし昼食はないし、購買で買う金もない。 中学までは親が給食費を出してくれていたが、それも面倒に巻き込まれないよう仕方なく支払っていただけだ。 毎日昼食を持っていないことが知られれば、クラスメイトから好奇の目に晒される。 それを避けるために一目散に教室を出たのだった。 中庭の静かな場所で外の空気を吸えば、空腹も少しは紛れた。
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