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「ただいま~。今帰りましたよ~。って、なんじゃ誰もおらんのか。」
源五郎は自宅の玄関に入ると家の中の静けさを感じ、そう判断した。
しかし、玄関を見ると、小学六年生になる孫の理香と、小学三年生の孫の一郎のものと思われる靴が乱雑に脱いであった。
「やっぱり。理香と一郎はいるんじゃないか。」
脱ぎ散らかされた二人の靴を整えると、源五郎は理香と一郎の部屋へ向かった。
「理香~、一郎~、ただいま~。」
源五郎は部屋のドアを開けると優しく二人に声をかけた。
「おかえり。」
「おかえり。」
理香と一郎は源五郎の方を一瞥もせずに返事した。
源五郎は寂しさを感じながらそれでも朗らかに尋ねた。
「母さんはおらんのか?」
「いない。」
一郎がぶっきらぼうに答えた。
源五郎はめげずに質問を続けた。
「ふたりで留守番しとったのか?ん?」
「だからなに?」
理香は冷たくあしらった。
二人の孫に冷たくされてさすがに心折れそうな源五郎だったが、今日はいつもの源五郎ではないと、切り札を出すことにした。
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