02 秋

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「ああ、ここお気に入りなんだよね。 俺、20代のころメキシコ料理店を妻と一緒に飯田橋で開いてたんだ。」 そう、俺は20代後半の時にメキシコ料理を営んでいた。 当時はそこそこ上手くいっていた。 「じゃあ、メキシコ料理作れるんですね!」 「その当時はね、いまは忘れちゃったけど笑」 菜穂は目を輝かせながら、 「わたし、メキシコ料理とか、タイ料理好きなんです。しかもこんなに雰囲気のいいお店だし、素敵ですね!」 その台詞は何人もの女に言われてきた。 「ありがとう、菜穂ちゃんが気に入ってくれるなら嬉しいよ 菜穂ちゃんならいっぱい色んなところ男ときてるんでしょ?笑」 「正直、神楽坂のお店は同伴で行くことが多いですが、いつも自分が決めてるんで同じお店に偏ってますよ!笑 ここのお店、インスタのストーリーに上げちゃおっと!^_^」 お店の雰囲気も相まって、今日はいつもより砕けた表情の菜穂をみることができた。 メキシコに本当にいるかのような異空間と、ドレス姿じゃない一般女性の菜穂。 キャバクラ が非日常な空間なはずなのに、今晩の方が日常から離れた空間にいるようだった。
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