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失恋男
山形駅ペレストリアンデッキ。
俺は端の方から人の行き交いを眺めていた。
片思いの女性の事を考えていた。看護学校時代から片思いしている。今まで三度振られている。それでも好きだった。今でも好きなのだ。卒業を期に連絡が途絶えたままだ。風の噂で篠田の透析室の勤務になったと聴いた。
二人だけ残った教室で俺は珠乃の近くに寄り挨拶を交わす。
「裕司、用?」
素っ気なく珠乃は言った。
「珠乃、好きなんだ」
俺は言った。
「裕司、それ三回目」
珠乃はそう言って去っていく。
素っ気なく珠乃に言われ俺には感心がないのはわかってる。
「すいません、お時間よろしいでしょうか?」
何かのアンケートらしい、ペンと自由帳を持っていてパッと浮かんだ言葉を書いてくださいと言った。
「何でもいいの?」
俺は聴いた。
「何でもどうぞ」
彼女は微笑む。
···貴女が好きです···
俺は書いた。
「恋をしてるのですね、実りますように」
女性は礼を言って去っていく。
俺も構内へ歩く。
「串田裕司、看護師、東海珠乃、看護師、ぴったりだと思うんだけどなぁ···」
一人呟く。
なんとなしに霞城セントラルへ向かって行く。
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