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僕の彼女の名前はキエ。
僕たちは学校に登校しながら、色々なことを話す。
そして、昼になれば、屋上で二人でだべる。
そんな中学生活。
僕には何もない。美しい時代もきっとあるのだろう、今が美しいのかもしれない、けれど、学業をこなして、キエと話して、友達とサッカーをして、たまに莫迦なことをやって、そして夕方になるといつも憂愁に追われる。僕はまるでパリを闊歩する詩人のような気質とナルシシズムを兼ね備えているんだ。
夕方、何て繊細な時の移ろいだろう。
死んだ妹が綺麗な衣を着て、天空で蘭科の花をまき散らし、僕のことを見ていて、まどろんでいる、そんな光景が思い浮かぶんだ。
龍神様は、僕のことを大切にしてくれている。と、思う。
そして、妹さんは、あの世で幸せに暮らしている、と言う。
けれど、妹に会えない、僕の苦しみを何に例えたらいいだろうか? 細胞という細胞が、妹という存在を欲している。眼球が妹の姿をもう一度見たいと言っている。もし自然に言葉が宿ったら、僕の願望に大いなる歌を添えるだろう。
無双の美しさを宿した太陽が、天照大神が、偉大に見える。
天照の懐で、妹はうたた寝しているのだろうか?
そんなことをふと夢想する。
夢想している時、自分が賢者か何かだと思う。
八百万の神々が出雲の国で、夕刻、宴をしている。神武天皇が八咫烏を腕に従えて、倭建命が豪快に酒を飲んでいる、そんな光景が思い浮かぶ。
ねえ、龍神様、神々は幸福なのに、何故人間が不幸な道を歩まねばならないの?
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