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「ねえ神様、僕の何が悪かったというのかな。神様は何で宇宙を創ったの? ねえ、教えて。神様。何で苦しみを作ったの? なんで僕の妹が死ななければならないの?」
僕は小さな神社に座している、龍神様と会話していた。
龍神様は夜になると消えていなくなる。だから、消える前に、夕刻の太陽が美しく光る刹那を見つけて、僕はいつもここに来る。神社はこじんまりとしていて、雑木林の中にある。木陰がちらちらと見えて、僕の目を魅惑する。
「それはね、試練なんだよ」
「試練?」
「そう。君の妹さんは今天国にいるよ」
「本当?」
「うん、本当」
僕は少しばかり霊感がある。神と会話できる。それを友達に話すと、気違い扱いされるけど、別にいい。
僕は今年で十二歳になる。いつも神社に来て、龍神様と話していた。
龍神様は、龍の姿をしているって言うけれど、見たことがない。こうして仲良くしてくれるけど、今まで見たことがない。
「妹さんが大切?」
「うん、だから返して」
「それは私に出来ないなあ」
「いいから返せ」
僕は上を見上げた。雲雲が遊泳している。あ、あの雲が魚に見える、そして遠い山脈の上に見える雲は犬に見える。
世界は美しい、そして同時に酷だ。
「どうして世界はこんなに綺麗なのに、残酷なの?」
「君に教えるにはまだ早いなあ」
「へえ、いつになったら、教えてくれる」
「君が二十になったら」
龍神様のケチ。僕は心でそう思った。
龍神様は僕の心を読めるから、あはは、と笑っていた。
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