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「いや、それもあるんだけど……」
「それ以外にもなんかあるのか」
凍砂は頭を落とし、ぼそりと声に出す。
「同じ夢をよく見るんだ……」
「夢?」
「うん、葉砂が出てくる夢なんだけど……」
そこで、云いあぐねていると唯人が真剣な顔つきで、
「聞かせてくれないか?」
僅かな沈黙のあと、凍砂は掠れた小さな声で答えた。
「顔が血だらけなんだ……」
「え」
彼の表情が一気に険しくなる。
「いつも、同じシチュエーションで――それと、今朝見た夢では僕にずっと謝っていたんだ……。どうして謝るのかを尋ねてみたけど、何も答えてくれなくて……。夢だろ? って云われたらそれまでなんだけど、何だかすごく気になって仕方ないんだ……」
唯人が気難しげに顎を撫で回しながら、
「それって、もしかしたらスピリチュアル的なものかもしれない」
「スピリチュアル?」
「うん。――あのさ」
唯人の声が半音上がったように高くなる。
「一つ提案なんだけど、そのこと部長にも相談してみないかい?」
「部長に?」
「うん、もしかしたら何か分かるかもしれない。丁度今日はオカ研で集まる日だしさ」
「部長にか……」
「大丈夫! 部長は夢だろうと馬鹿になんかしないよ。きっと親身に聞いてくれる筈さ」
確かに、そういった説明がつかない不思議なことに対しての知識は長けていると思う。唯人が云うように彼女も人を馬鹿にするような人間ではないだろう。
凍砂はゆっくりと頷き、
「うん、分かったよ。話してみる」
唯人はそれを聞き、綺麗に揃った前歯を見せて微笑した。
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