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「手助けしてあげようか」
艶やかな声が耳許で囁かれた。
男は小さな悲鳴を上げて、あとじさる。
自分の顔とちょうど並ぶようにして、フードを被った黒ずくめの少年が立っていた。
「だ、誰だお前……」
白々とした顔がこちらに向けられる。――男は目を瞠った。黒ずくめの少年は異様に整った面差しで、どこか人間離れした風貌だった。眸子は闇を吸い込んだような漆黒。小ぶりな鼻はすっと通っており、唇は紅血を垂らしたような色をしていた。フードから覗く髪は褐赤色。眉目秀麗な少年だった。
「僕? そんなこと知っても意味ないよね。だって、おじさんはもう死ぬんだから」
「そ、そうだが――でも、何故ここに居ると分かった!?」
「僕には分かるんだよ。死にたいって強く願う人間の居場所がね」
黒ずくめの少年の抑揚のない声がそう告げると、男を見据えたまま柔和に微笑した。
「でもさ、おじさんこんな寂しいところで死ぬのは勿体ないよ」
そう云って、男の先にある何もない空間に人差し指を向ける。
「別に、いいだろう!? どこで死のうと俺の勝手だ!」
「うん、そうだね。おじさんの勝手だ。でもさ、最後に気持ちいいことしようよ」
「お前、何を云ってる……」
クスっと不気味に黒ずくめの少年は笑うと、
「さあ、僕にその苦しみを委ねて。僕ならおじさんの痛みを分かち合えるよ。――さあ……」
黒ずくめの少年は、やにわに男を抱き竦めた。
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