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私の言葉
私は幼い頃から一人でいることが多かった。
多かったというか一人で物事をするとこが好きだったというべきか。
人と関わることが苦手で、親戚に会うときでも親の影に隠れていた。
小学生の時も友達なんてできる気配もしなかった。
私は本が好きで本の話をすると、難しい話なのか話し掛けて来た子も離れていった。
そんな私が中学生になったばかりの時。一人の女の子が声を掛けてくれた。
名前は志穂。偶然にも私と漢字は違うが同じ名前の子だった。
同じ名前だとややこしくなるため、あだ名でしーちゃんと呼んでいた。
それから彼女とは親友と言える仲で、高校生になった今でも時々会っている。
彼女は私と全く正反対の性格で、ポジティブ思考で明るく元気な子。
そんな彼女だったが私以外と歩いている姿を見たことがなかった。
通っている高校も違うし、仕方のないことだ。そういえば、彼女が行った高校は何処だっただろうか。
考えると知らないことばかりだった。好きな食べ物や色のような、簡単な質問しかしたことがない。
久し振りに連絡をしてみようと思ったが、しーちゃんの連絡先も知らなかった。
会いたいと思えば、いつも校門の前で待っていてくれた。
当たり前のようになっていたから、気がつかなかったが考えてみると不気味な話である。
確認したくても連絡先がわからない以上、何をすることもできなかった。
ただもう一度、志穂に会いたいとそう願うだけだった。
翌日、私はいつものように登校する。校門の前に立っている先生に挨拶をし、校舎の中へと進んでいく。
階段を登り、三階の奥の教室へと向かう。二年五組と書かれた教室に入る。
誰もいない教室が私は好きだ。静かで日当たりも良い。誰にも邪魔されない静かな空間。
私は窓側の後ろから二番目の席に座り、鞄から本を出す。
教室には秒針の音だけが響く。その心地好さに浸っていると教室の扉が開く。
静かに入ってきた子は、自席に座ると私と同じように本を読み始めた。
本越しに彼女の様子を伺うが、特に変わったこともなく淡々と本を読んでいる。
きっと私と趣味が合うだろうと思うが、声をかける勇気がない。
私の短所だと分かっていながら、直すことができない私は臆病者だ。
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