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「それ……嫌ですったら」
「あんまりにも可愛いから仕方ないだろ」
「可愛く無いです、俺は男です、お願いです……ちょっと待って…緩めて、俺がしたいんです、俺がやりたいんです」
「そんなに気持ちよさそうに悶えてるくせに…姫は……こっちが合ってるよ」
こっちとは?
それはどう言うことか、熱に浮かされボヤけた頭で考えてからハッとした。
「あ、違います、今日は違います」
氷上の人指が在らぬ所を出入りしている。
ベルトが外され、スラックスが下がっていくのはわかっていた。
しかし、登り詰める間際まで追い詰められ、そこに全神経を傾けていたから気付いてなかった。
「そこはやめて、やめてください、反対なんです、俺が……」
「やる」と言いかけた声は音の無い悲鳴に変わった。ヌルヌルとピストンをしていた指が腹の内側をギュッと押し上げて腰が浮いた。
「あ……」
ハァ!ハァ!と、大きく息をしなければ白目を剥いたかもしれない。
ジンジンと痺れるような感覚に射精したかと思ったが爽快感は無いのだ。
「ほら」と笑う氷上が悪魔に見える。
だが、乗り上がってくる細い体を拒否する事なんかもう出来ない。
熱く硬い異物がヌルリと下半身に入って来た。
「う……あ……」
ミシリと破断に備える音が聞こえたのは気のせいだろうか。内臓を押し上げるような圧倒的物量感にブルルと体が震えた。
「動くぞ」
耳元で囁く吐息に何故か「うん」と返事をしてしまう。
たった数度経験しただけなのに、慣れて来ている自分がいる。口では拒否しながらも次なる快感を求めてしまった。
誘導されるまま、足を開き、氷上を受け入れている。
ヌーッと押し入って来る独特の感覚はまだまだ気持ち悪いが、「は〜」と吐き出す氷上の色っぽい吐息に酔っているのか腰が浮いた。
隙間風が入り放題の玄関先で靴を履いたままのセックスだった。抗う気持ちはあるけど逆らえない。
「姫……多分ちょっとは楽だから背中を向けて」
「楽なんてあるんですか?」
「やってみりゃいいじゃん」
いいけど、やれと言われたらやるけど見えない分何をされるのか怖い。
そして犬の交尾を思わせるスタイルは酷く自尊心を苛んで来るがなりふりを構う余裕は無かった。
変なのだ。
触って欲しいような触って欲しく無いような「そこ」を求めてしまう。
「フフ…姫の腰が動いてる」
「やめてください……あ…あ、あ、う…あ…気持ち……いいです……」
「痛く無い?」
「………わかりません…」
きっと痛いのだと思うけど今はわからないのだ。
力の差は歴然としているのに氷上には逆らえない。2回3回とイカされても去っていかない情欲に巻き取られて震えてる。
「あ…あっ…うわ…速いです…速いですったら…氷上さん!あっ!」
パンパンと尻を打つリズミカルな扇動に壁に擦り付けた頬が痛んだ。
縋る所は壁しかないのだ。
腰を抱えた氷上の手は休まず前を擦っている。
2人でも十分だと瓢真に言いたい。
「イキます…イキます……うあ…あ…もう無理です」
「だからイケったら…」
「ハア」と吐き出した氷上は益々速くなった。
限界を感じながらの吐精は吐きそうな程の刺激に体を震わせ、精液を手で受けた後は一際激しい腰付きでガツガツと尻を打ってビタンッと背中に張り付いてきた。
「……うわ…あ…熱い……」
「暑いな……」
「……はい暑くて………熱いです…」
ジワッと股間が暖かくなった事で全てが終わった事を悟った。
激しい運動をした気分だった。
ある意味ではお互いに全力疾走だったのだろう、ハアハアと息を詰めた氷上が背中から退いてれなければ動けないし、退いてくれても動ける気はしない。
「氷上さん……寒く…無いですか…」
「うん…まだ暑いかな……姫は?」
「俺も……暑いです」
夜中と言えど誰が通り掛かるかわからない集合住宅の部屋。
開けっ放しのドア。
外はもうコートが必要な季節だ。
それでも、暫くの間氷上を背中に乗せたまま玄関先で寝転んでいた。
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