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暫くして私と同じカップを手に戻ってきた隼巳は、また私の左隣に座る。お揃いのラブバイトリングを中指に填めた右手に持たれたカップは、私のものより少し小さい。私のカップがグランデだから、隼巳はトールだろう。
最初に三口飲んだ隼巳は、また右手で私の髪で遊び始める。長い髪ならまだしも、こんな短い髪で遊んで楽しいのだろうか。妹や姉のように髪をいじるのも手入れするのも面倒でいつも短くしているけど、少し伸ばしてみようかな。
隼巳は長いのと短いの、どっちの方が好きなんだろう、なんて、女っぽいことを考える自分が嫌になる。いや、間違いなく女なんだけども。自分の思考の中心に隼巳がいると思うと、どうもむず痒くて恥ずかしい。
思考を振り切るように、ハニーハニーレモンを飲むことに集中する。すると、私の髪を弄んでいた指が耳に触れた。
「っ、」
「あれ、赤い」
綺麗なくせに少し硬い指が、掻き上げられて露わになった耳を摘む。
「、離せ!」
「えっちなことでも考えちゃった?」
「考えてないわ!」
「そっかそっかー」
あははは、なんてわざとらしく笑いながらストローを吸う。ごくり、と喉仏が上下する。私も同じようにストローを吸うと、甘酸っぱい、爽やかな香りが喉を冷やす。
ストローの先を少し噛みながら、ちらりと周りを見渡す。店内にいる女という女が、ちらちらとこちらを伺っているのがわかる。視線を隣に移すと、髪を弄っていた隼巳が指の背で頬を撫でた。
だから公共の場で何してんだ、と手を跳ね除けると、「いてっ」残念そうに手を下ろしてカップに添えた。
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