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恭輔はエレベーターに乗り元の階に戻る。サイモンの側に別の榊 祐子がいる。
「書類審査は以上となりますサイモン様。許可はしばらく後になります」
「よくやってくれました。榊嬢、今後も宜しく頼みますよ」
事務手続きを終えて榊と呼ばれた女性はソファーでくつろぐサイモンにひざまづく。
「花嫁はよろしいのですか? サイモン様」
「この地下での仕掛けが上手く動けば事が楽になります」
サイモンが右足で軽く床を蹴る。
「大丈夫なのでしょうか? 私どもに被害は……」
「なんともいえませんがね、召喚できるかどうか」
「食屍鬼の崇めし神ですか……」
「仮に顕現すれば、ありとあらゆる死をもたらす災厄が撒き散らされるでしょう」
「……………………」
「疫病のごとくバタバタと人々は生命の火を消すことになる。死神に憑かれし娼婦の絶望せし魂が贄だ。クククッ…………」
気配を絶った恭輔が感情を揺らぐことなく側でやりとりを見ている。二人は気がついていない。
「あとの二人の首尾は?」
「関係各所に魅了をかけています。それぞれ三人ほどでしょうか」
「上出来です。そうですね、あなたに花嫁の迎えを頼みましょうか」
「はっ、仰せのままに……」
ーー困ったな、仁さんの推測通りかよ
恭輔は溜め息を吐きたくなるのを我慢した。
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