炎を継ぐもの

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          ◈ 「バイクがどこまでも追ってくる。どうすれば……」  榊 祐子は焦る。慣れない車の運転でなおさらであったようだ。視界に海に突きでた区画がはいる。 「あそこなら手駒を増やして逃げられるかも」  ハンドルをきると市場の区画を抜け橋を渡った。ゲートのバーをへし折り倉庫街に無理矢理侵入する。ドラム缶にぶつかりロールスロイスを停めるとドアを開きよろよろと外に出る。 「停まりなさい。何の目的でノースドッグに不法侵入したのか答えなさい!」  ゲートのあった監視所から複数の警備員が銃を構えてゆっくりと近づいて来た。トランシーバーで連絡をとったらしく奥の建物から自動小銃を携えた兵士が十数名わらわらと集まってくる。 「助けてください。化け物に追われています!」  榊 祐子は路面に突っ伏すと顔をあげ周囲に助けを求める。そして夜の闇に紛れて仔蜘蛛を撒き散らした。
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