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監視所のゲートの折れたバーをやり過ごし恭輔の操るバイクは米軍ノースドッグ前まで突っ込んでいく。ロールスロイスはノースドッグの建物の反対側の道路の先のドラム缶に当たって停車している。追跡対象の女の周囲に兵士の姿を確認した恭輔は舌打ちする。
「めんどうな……」
兵士の頭部に歪な膨らみがある。構えている武器の銃口が一斉に恭輔を捉えた。
「撃ちなさい!!」
榊 祐子が恭輔を指差した。
「剣炁招來!! 汝が真名を唱えん! 小烏丸に顕現せよ! アメノハバキリ!!」
恭輔の頭上に赫く輝く法円が現れ古い太刀が出現し掲げた右の掌に降りてくる。すかさず右手の親指を鎺にかけ鯉口を切るため力を込める。スゥ、と抵抗なく鞘から刀身が抜き放たれた。兵士が銃撃する。小烏丸を振るい恭輔は何もない空間を薙ぐ。銃弾が恭輔の目前でピタリと止まりバラバラと地面に墜ちていく。
「!?」
「無意識にやったが空間を断ったのか?」
『ワレハ布都御魂剣トモヨバレシモノナリ。ワガヒトフリニタテヌモノナシ』
恭輔の意識に強い思念が鐘の音の如く響いてくる。
『ナンジニジョリョクセン!』
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