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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
北方の地、リュカの故郷。
光の粒が消えた空を見上げて、僕はしばらく動けなかった。
「どうしてかな……幸せなのに、ちょっと寂しい……」
エディが後ろから僕を抱きしめてくる。
「きっと、あれは役目を終えたのでしょう。ヨースケに最後の挨拶をしてくれたのだと思いますよ」
「エディにも挨拶をしていましたよ」
「ええ、きっとそうですね。ヨースケを泣かせるな、と念を押されたのかも」
「ふふ、そうなんですか?」
「はい……きっとそうです」
エディは僕の首の後ろに軽くキスをした。
そこにはもう、奴隷の封印は無い。
「ヨースケはこれからやりたいことがありますか」
「はい、僕は魔法を使ってみたい。教えてもらえますか」
「ええ、もちろん」
「それから、レオ達とダンジョンへ行ってみたいし、お料理もしてみたいし、勉強ももっとしたいし、ちゃんと大人になりたいです」
エディは手を離して、僕に向き直った。
「ヨースケの体はもうこれ以上成長できないのですよ」
「ううん、見た目の話じゃなくて、僕はちょっとでもいいから、この世界の役に立つ人になりたいんです」
「もう十分に世界には貢献したと思いますが……」
「僕は何もしていません。優しい人達にたくさん助けられただけですから」
「ヨースケ……」
僕はエディに抱きついて、その胸に顔をうずめる。
優しい香りが僕を包み込む。
「それから、僕の望みは死ぬまでエディと一緒にいることです。ずっと、ずっと、一緒にいることです。病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つまで」
「それはいいフレーズですね。病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つまで」
僕はエディを見上げた。
大好きな人、生涯ただ一人の僕の恋人。
「誓いますか?」
「はい、誓います」
エディは微笑んで、僕の唇にそっと唇を重ねた。
~終~
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