7-(3) この国の名前は

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「勘違いで戦争かよ、くだらねぇ。こっちにはエドゥアールもフィリベールもいるんだから、そもそもの前提が間違っているじゃねぇか」 「確かにあちらの情報収集はお粗末だが……。ふふふっ」  小さくジュリアンが笑う。 「何がおかしいんだ?」 「それは常にそなたが目立ち過ぎていたからだと思ってな。あの二人は自己顕示欲があまりないから、モンスター討伐においてもいつもそなたのサポート役に徹していた。正確な実力が知られていないのも仕方あるまい」 「それだと俺が自己顕示欲の塊みたいじゃねぇか」 「その通りであろうが」 「言ってろ」  すねたようにレオは口を尖らせる。 「ちなみに聞くが、あの二人の魔力量はどの程度なのだ?」 「あー、まぁそうだな。エドゥアールが魔王とほぼ同じ、フィリベールはそれよりちょい劣るくらいかな。でもエドゥアールの魔力は多分天然じゃねぇ。後天的に手に入れたものだな」 「後天的?」 「ああ、生まれながらのものじゃないってこと。あいつの中にあいつじゃない気配があるから、あの魔力は後付けだなぁ」 「禁術の一種か?」 「さぁ、俺は魔法に詳しくないから、何が合法で何が禁術かもよく分からん」 「もしも何か危険があるなら……」 「ああ、それは無い。力も気配もずっと安定している。エドゥアールの中に何があろうと、それは完全にあいつのコントロール下にあるようだ」  難しい話の中にエディの名前が出てきて、僕はドキリとした。  エディの中にエディじゃない気配があるの……?  それって、なんか、怖い感じがする……。 「あの、それってどういう……? エディ……大魔導士様は大丈夫なんですか?」 「リュカ」 「はい」 「こっち向け」 「は、はい」  いきなり、レオは僕の口に吸い付いてきた。 「んん……」  深くしつこい口付けで、僕の舌を強く吸う。  レオは口を離すと、僕の頭を抱いて自分の胸にむぎゅっと押し付けた。  うう、ちょっと息が苦しい……! 「なぁジュリアン、癒しの魔法の使い手に心当たりあるか? 王都に残るにしろ、もらった領地に移り住むにしろ、リュカには定期的に魔力を補充する必要があるだろ。いつまでもエドゥアールの世話になるのは癪だ」 「癒しの魔法の使い手は非常に少ない。急ぎとなると、相場より高くつくが」 「相場の二倍でも三倍でも、それ以上でもかまわねぇよ」 「それならすぐにでも手配できよう」 「頼む」  そこでやっと解放されて、僕はぷはっと息をした。  ジュリアンがくくくっと笑いだす。 「リュカ、この男は寂しがりで甘えん坊でやきもち焼きなのだ。これから苦労するであろうが、根はいいやつだ。堪えてくれ」 「おい、そういう言い方はやめろよ」  苦々しくレオが言って、口を尖らす。  多分、お互い冗談交じりなんだろうけど、ちょっと気まずいので僕は話題を変えた。  今までここにいて、一度も聞いたことのないそれに対する、ちょっとした疑問を。 「あの、そういえばこの国ってなんていう国なんですか?」
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