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7-(4) 嘘をついていたのか
レオと僕は正装して、お姫様のお出迎えの列に加わることになった。
自分のそばが一番安全だと言って、レオが譲らなかったからだ。
フィルは軍を指揮して国境の警備に入り、ジュリアンはお姫様の出迎えのための準備を始めた。新しいテントを立てたり御姫様の乗るお輿を準備したり飾り付けをしたりで、辺境伯様と一緒にテンヤワンヤになっているらしい。
朝に陛下からお姫様を出迎えよと命令が来たばっかりで、夜にはもうそのお姫様が来ちゃうなんて、何の知識も無い僕でもすごく大変なことだと分かる。お姫様だって急によその国へ行かされるなんて、心の準備も出来ないだろうに……。
夕方になって、ジュリアンのところの使用人さん達がレオのテントに何人も来て、レオと僕の着替えを手伝ってくれた。
まず、失くさないようにお守りの革袋を首に下げる。そして、伸縮性の無い生地で出来た長袖の下着の上に、ひらひらの袖が付いたブラウスを着て、たっぷり刺繍が入ったベストを着て、さらにその上に宝石みたいな小さな石がたくさん縫い付けられているずっしりと重くて長い上着をはおる。首にはジュリアンがいつもしているようなひらひらレースのリボンを巻く。ズボンは長ズボンで、その裾をブーツみたいな靴の中に入れ込む。
ジュリアンのいつもの服装は、あれでもだいぶ略式だったらしい……。
うう、重ね着しすぎて、体が重いよ。
いつもスケスケローブ一枚でいるから、僕にとって正装はとにかく暑かった。動きにくくて重たいし、なんだかすぐにへとへとになりそう。
「おっ、リュカ! そんな格好をすると貴族の子弟みたいだな。良く似合っている」
赤を基調にした正装を着て、レオが近づいて来る。
パリッとした格好をすると、貴公子みたいですごく格好良かった。
「レオもかっこいいです」
「そうか?」
レオが嬉しそうに笑った時、外からの案内の声があってエディが入って来た。
「失礼しますよ、勇者殿」
エディもいつもよりずっと豪華そうなローブをまとっていた。厚手の黒い生地に浮き出しの花模様があって、僕らの服と同様に小さな宝石がいくつも縫い付けられている。
黒くて落ち着いた雰囲気なのに、動くたびに所々キラキラするのが素敵だった。
「わぁ、エディの服、キラキラし……」
「エドゥアールも出迎えに行くのか?」
つい癖で駆け寄りそうになった僕を、レオが手を上げて止めた。
エディは穏やかに微笑んでうなずいた。
「ええ。ジュリアン様に頼まれまして。リュカのそばにいるようにと」
「俺一人で守れるのに」
「恐らく体調が悪くなった時のためでしょう。リュカ、上着を脱いでこちらへ渡してくれますか」
言われるままに上着を脱ぐと、エディは腰に下げた黒いバッグから一枚の布を出してその裏地に貼り付けた。
何だろうと思って見ていると、レオも僕の後ろからまじまじと覗き込んでくる。
その布にはきれいな模様と魔石っぽい小さな石が縫い付けてあった。僕もだいぶ見慣れてきたからわかる。これはきっと魔方陣だ。
「何の魔方陣なんだ?」
「風の魔方陣を少し工夫しましてね。重い上着を軽く、さらに涼しくしてくれるように作ったものです」
エディが魔石に触れると魔方陣が光り出す。
「出迎えの儀式の間くらいならこのサイズの魔石でも大丈夫だと思いますよ。さ、着てみなさい」
僕が上着を着ようとするのを、レオが手伝ってくれる。
着た途端に違いが分かった。
上着は羽のように軽く、しかも背中に風が通ってとても爽やかだ。
「わー、涼しい! すごく気持ちがいいです。エディ、ありがとうございます」
エディは微笑んで軽くうなずいた。
レオが僕の肩を抱いて、レオに向き直る。
「エドゥアール、その……助かった」
「ええ、私にできるのはこのくらいですから。さぁ、会場へ向かいましょう」
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