7-(4) 嘘をついていたのか

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 テントを出ると、そこには別世界が広がっていた。  といっても、陽介のいた世界に戻ったわけじゃない。  それはまるでおとぎ話、絵本の中、夢の中みたいな光景だった。  いつの間にか日は暮れていて、夕闇の中、見渡す限りの広大な地に小さな光の粒が何千と輝いている。満天の星空をすべて金平糖にして、神様が地上にばらまいたみたいだった。  その銀河みたいに輝く草原を突っ切るように、テントから国境までの道がひときわ明るく照らされている。まるで天の川だ。  赤、青、緑、黄色にピンクに紫に水色……数えきれないくらいの光の粒が色とりどりに輝いている。 「わぁ……すごい、すごい……!」  僕は興奮して走り出した。  光に近づいてみると、それらはすべてひとつひとつが石だった。  宝石みたいな小さな石が内側から発光しながら浮遊している。  指で触れると温かい。  つついてみると、ふわりと揺れて離れてしまう。  そんな光る石が、ふわふわとそこら中に幾千も輝いている。 「レオ! エディ! すごいです! わー、きれーい!」  レオもエディも笑いながらついてくる。 「これ、何の石なんですか?」 「すべて魔石ですね」 「魔石? こんなにたくさん?」 「ジュリアンの苦肉の策だな」 「ええ、半日では何もできませんでしたからね。財力に物を言わせて、これだけの魔石を集めたのでしょう。私もこんな光景は初めて見ます」 「ああ、貴重な魔石を何の魔方陣にも使わずに、ただ光らせて使い切るとは、豪勢な無駄使いだなぁ」  三人で天の川みたいな道を歩く。 「リュカ、国境まで歩くのは疲れるだろう。そろそろ抱っこしようか」 「大丈夫です! もう少しだけ歩きたいです」 「分かった。疲れたらすぐ言うんだぞ」 「はい……!」  レオが手を差し出してきたから、僕はその手を握った。  エディがニコニコしながら、横を歩いてくれる。  浮いている魔石は僕らが歩くだけで、風にあおられたみたいにふよふよと動く。  僕の心も、ふよふよと浮いているみたいだった。 「キラキラして本当にきれいですね」 「ああ……都会のイルミネーションみたいだ……」 「はい、なんだかクリスマスみたいです」 「そうだな、まるでクリスマ……ス…………え?」  レオが立ち止まって僕を見た。  僕もつられて足を止めた。 「レオ?」 「リュカ、お前、なんでクリスマスを知っているんだ?」  ハッとして僕は自分の口をふさいだ。  さーっと血の気が引いていく。  つないでいた手を離して、レオが僕の肩に両手を置く。 「クリスマスを祝う習慣なんてこの世界には無い。リュカ、お前……?」  驚愕を絵に描いたような表情のレオの横で、エディが不思議そうに僕らを見ている。 「くりすますとは何ですか? 何を驚いているのです?」  エディの質問には何も答えず、レオは僕の目を正面から見つめてくる。 「リュカ、やっぱり……俺に嘘をついていたのか……?」
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