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「リュカ……? では、あなたは……」
何か言いかけたエディの前に出て、レオがぎゅうっと僕を抱きしめた。
「大丈夫だ、リュカ。何も心配しなくていい」
レオは力強く言った。
「俺が専属契約したのは、『今のリュカ』だ。言っただろう? 俺はどんな敵からも守ってやるし、誰よりも優しくしてやるからって。あれはお前に言ったんだ。俺は今ここにいるお前に言ったんだから」
「うう、うううー」
僕の口から、意味のない呻きみたいな泣き声が出た。
レオが僕を抱きしめている。
エディは僕達を見つめている。
「俺は、お前を見捨てたりしない。お前が何者だとしても、勇者が一度交わした約束は必ず守る。でも、ひとつだけ……」
レオは不安そうな目をして僕に問いかけた。
「ひとつだけ教えて欲しい。お前がリュカじゃないなら、本物のリュカの魂はどこへ行ったんだ」
レオの目は真剣だった。
レオが、エディが、そしてほかの二人が、どれほど本物のリュカを大事にしていたのかを僕は知っている。
僕は必死に嗚咽を堪えて、やっと震える声を絞り出した。
「リュカは、にほんへ……日本の、僕の体に……」
レオは一度大きく息を吸い、力が抜けたみたいにふはーっと吐き出した。
「そうか、日本か……。それで、無事なのか?」
僕はこくりとうなずいた。
「そうか……。無事ならそれでいい。……いやむしろ、日本へ行ったのならリュカにとっては幸せなんだろう……」
「どういうことなのですか、私にも分かるように教えてください」
レオがゆっくりと振り向く。
「聞いた通りだ。この子は本物のリュカじゃない。リュカの魂と入れ替わった別人だ」
「入れ替わり……? では、リュカは」
「リュカは、奴隷制の無い平和な国に行っちまった」
エディが眉をしかめる。
「それでは……入れ替わったというこの子は……その奴隷制の無い平和な国から来たのですか……?」
「ああ、そういうことになるな」
「そんな……」
エディが絶句して僕を見た。
エディの目の中には、嫌悪の色は無かった。
代わりにとてもつらそうな苦しそうな色が浮かんでいた。
ごめんなさい。ずっと騙していてごめんなさい。
偽物のくせに甘えて、偽物のくせに優しさを欲しがって、ずっと、死ぬまで何も言わないつもりでした。ずっとリュカとして生きていくつもりでした。
一生、嘘をつき続けるつもりでした……。
「嘘ばかりで、ごめんなさい……」
「リュカ……」
エディが僕を見つめたまま、瞬きをした。
その片目から、涙がつーっと頬を伝って落ちた。
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