7-(4) 嘘をついていたのか

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「リュカ……? では、あなたは……」  何か言いかけたエディの前に出て、レオがぎゅうっと僕を抱きしめた。 「大丈夫だ、リュカ。何も心配しなくていい」  レオは力強く言った。 「俺が専属契約したのは、『今のリュカ』だ。言っただろう? 俺はどんな敵からも守ってやるし、誰よりも優しくしてやるからって。あれはお前(・・)に言ったんだ。俺は今ここにいるお前(・・)に言ったんだから」 「うう、うううー」  僕の口から、意味のない呻きみたいな泣き声が出た。  レオが僕を抱きしめている。  エディは僕達を見つめている。 「俺は、お前を見捨てたりしない。お前が何者だとしても、勇者が一度交わした約束は必ず守る。でも、ひとつだけ……」  レオは不安そうな目をして僕に問いかけた。 「ひとつだけ教えて欲しい。お前がリュカじゃないなら、本物のリュカの魂はどこへ行ったんだ」  レオの目は真剣だった。  レオが、エディが、そしてほかの二人が、どれほど本物のリュカを大事にしていたのかを僕は知っている。  僕は必死に嗚咽を堪えて、やっと震える声を絞り出した。 「リュカは、にほんへ……日本の、僕の体に……」  レオは一度大きく息を吸い、力が抜けたみたいにふはーっと吐き出した。 「そうか、日本か……。それで、無事なのか?」  僕はこくりとうなずいた。 「そうか……。無事ならそれでいい。……いやむしろ、日本へ行ったのならリュカにとっては幸せなんだろう……」 「どういうことなのですか、私にも分かるように教えてください」  レオがゆっくりと振り向く。 「聞いた通りだ。この子は本物のリュカじゃない。リュカの魂と入れ替わった別人だ」 「入れ替わり……? では、リュカは」 「リュカは、奴隷制の無い平和な国に行っちまった」  エディが眉をしかめる。 「それでは……入れ替わったというこの子は……その奴隷制の無い平和な国から来たのですか……?」 「ああ、そういうことになるな」 「そんな……」  エディが絶句して僕を見た。  エディの目の中には、嫌悪の色は無かった。  代わりにとてもつらそうな苦しそうな色が浮かんでいた。  ごめんなさい。ずっと騙していてごめんなさい。  偽物のくせに甘えて、偽物のくせに優しさを欲しがって、ずっと、死ぬまで何も言わないつもりでした。ずっとリュカとして生きていくつもりでした。  一生、嘘をつき続けるつもりでした……。 「嘘ばかりで、ごめんなさい……」 「リュカ……」  エディが僕を見つめたまま、瞬きをした。  その片目から、涙がつーっと頬を伝って落ちた。 ・
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