7-(5) 冷酷な魔族の王子

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 ほんの一瞬でエディもレオもフィルも消えた。  魔石のイルミネーションも全部消えた。  ジェットコースターで急降下したみたいにぐらりと眩暈がして、僕はお姫様の体に寄り掛かった。 「あ……ごめんなさい……」  すぐによけようとしたけれど、体に力が入らない。  逆にお姫様は平気な顔をして、片手で僕を支えた。 「良い。転移に慣れておらぬ者は誰でもそうなる」  足の下には丸い敷物があって、縫い付けられたいくつもの魔石がぽうっと光っている。  僕はまだジェットコースターに乗っているみたいな眩暈の中にいて、ぐらんぐらんと視界が揺れて気持ち悪かった。  でも、分かる。  ここは建物の中だ。床も壁も石造りで、なんだか寒い。 「てん、い……って……」  さっき聞こえたエディの声も、『転移陣』だと叫んでいた。  多分、この丸い敷物が、転移の魔方陣だったんだ。    どういうこと?  どうしてお姫様は転移陣なんか使ったの?  お姫様はよろける僕の足をどかせて、敷物を引っ張ると空中にポイと放った。途端にそれはボウッと炎に包まれ、地面に落ちた時には灰になっていた。 「あの、ここは」  頭を抱え、ふらふらしながら尋ねる。 「まだしゃべらぬ方が良いぞ。どうせもう逃げられぬのだ。大人しくしておれ」 「え……」  お姫様が僕の体に近づき、ひょいと抱きかかえた。  僕と同じくらいに華奢なくせに、すごく力が強い。 「おお、間近で見るとさらに美しいな……。余のコレクションに加えてやる」  お姫様はニッと笑い、僕を抱きかかえながらどんどん歩いて行く。  そしてどんどん大きくなっていく。  あれ?  えっと、気のせい?  眩暈のせいかな?  それは目の錯覚でも、眩暈のせいでもなかった。  お姫様の体が大きくなるにつれて、豪華なドレスがびり、びりと破けていく。  リュカそっくりだった可憐な顔も変化して、目つきの鋭い青年の顔になっていく。  髪は金から白になって、青い目が金色になり、白い肌が褐色に変わっていく。角は巻いている形はそのままに一回りくらい大きくなっていく。  僕を抱き上げていた怪力のお姫様はもうどこにもなく、精悍な顔をした褐色の肌の青年が僕を嬉しそうに見下ろしていた。 「アラン様、お召し物を」  濃い青の服を着た女の人達が慌てた様子で追いかけてくる。  アラン様……? どこかで聞いた名前だ。 「あなたは、だれ……?」 「余か? 余は未来の大魔王アラン様よ」  未来の魔王ということは、今はまだ魔王じゃない……。 「魔族の、王子様……?」  僕を差し出せと言ってきたあの王子様?  アラン王子はニッと笑って僕の後頭部をつかむと、唇を重ねてきた。 「ん! いやっ!」
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