7-(5) 冷酷な魔族の王子

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 驚いて顔を背けると、アランの顔が一気に怒りで染まる。 「嫌だと? 奴隷の分際で」  こ、怖い。 「ほら、口を開けろ。未来の王の口付けを拒むバカがあるか」  震える僕にアランは乱暴にキスをしてくる。 「んん……ん……」  むりやりされて、息が苦しい。 「なんだ下手だな……。何をもったいぶっておる。勇者どもを骨抜きにした舌遣いを見せぬか」 「で、できません……。僕は……」 「余に口答えするでない。首をかき切られたいか」  アランが軽く指を振ると、そこには氷の刃が握られている。  アランは脅すように刃の先でスーッと首の皮膚を撫でてきた。  ぴり、と小さな痛みが走る。  次の瞬間、温かい液体が首筋を流れていくのを感じた。  ひぅ、と小さく悲鳴を上げて、僕は動けなくなってしまった。 「案ずるな。皮一枚傷つけたくらいで死にはせぬ」  僕の心臓がどくどくと鳴り出す。  ジュリアンの言った言葉を思い出す。  魔族の王子は残忍で冷酷、残虐非道、気に入らない者はすぐ殺す。  僕の右手の手首がぽうっと光り出した。筆で描いたような繊細な模様が浮かび上がってくる。エディのくれたおまじないだ。 「ふふ、報せの術か。奴隷のくせに生意気な術をかけられておるな」  アランが僕の手首を取った。 「よく覚えておけ。身の程知らずはこうなる」  アランの手が僕の手首を握り込む。途端にジュウッと煙が上がる。 「あああっ!!」  僕は悲鳴を上げた。  激しい熱と痛みが右手に襲い掛かる。  肉の焦げる嫌な匂いがする。 「ふむ、術ごと焼くのは意外に時間がかかるな」  アランがさらに握る力を強くする。 「いやぁ……!」  僕は悲鳴を上げ続けた。  痛みに悶えて涙を流しても、アランは冷たい目で見下ろしている。 「まぁこんなものか」  アランが手を離すと、僕の手首は焼け爛れ、もう光は発していなかった。  焼かれたのは手首だけなのに体中が熱くて息が苦しかった。 「ああっ……いた……いたい……」 「うるさい、騒ぐな」 「……うっ……ううっ……」 「いくら叫んでも泣きわめいても誰も助けには来ぬぞ。素直にしていればかわいがってやろう。生意気な口をきけば即刻殺す。良いか、殺されたくなければ……」    あまりの痛みに朦朧としてくる。  恐ろしいことを言っているアランの声が、少しずつ意識の向こうへ遠ざかっていった。 ・
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