7-(6) 「魔導士の激情」

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 私も勇者もこの子の告白を聞いて、動揺していた。  そして剣士も動揺していた。  そうでなければ気付いたはずだ。  あんなあからさまな変化の術を見破れなかったとは……。  体を覆い尽くす不自然な魔力の流れよりも、その容貌の方に目が行ってしまった。  このタイミングでリュカに瓜二つな姫君が現れるなど、おかしいと思って当たり前だったのに。 「いけない! それは転移陣です!」  叫んで手を伸ばした時にはもう遅かった。  まばゆい光とともに、あの子と姫の姿が掻き消える。 「リュカ!」  すぐさま残された丸い敷物に乗り、数十の魔石に魔力を流す。  しかし私が転移する前に、ボウッと敷物が燃え上がった。 「熱っ」  それはあっという間に灰になってしまう。 「ちっ」 「くそ! 転移先の魔方陣を燃やされたか!」  私の舌打ちにかぶせるように、勇者の焦った声が響く。 「大丈夫です。報せの術があります。すぐにあの子の居場所が分かるはず」  私は意識を集中した。  この状況にあの子が恐怖を感じれば、同時に私にそれが届く。  どこだ。どこへ連れて行かれた。  焦燥感のためか、体が熱く、息が苦しくなる。 「あっ!」  私は声を上げた。  あの子の華奢な姿が見える。  大柄な半裸の魔族の男に囚われている。  石造りの壁、下働きらしき数人の魔族の女性、あとは何だ、何が見える。集中しろ。すべてを見通せ。あの子の首筋に赤い線が見える。そこから伝っていく赤い液体。私の心が悲鳴を上げる。すでに傷付けられている! 男が脅すような顔で何かを言う。大きな手があの子の光る手首をつかむ。 「やめろ! やめろ! あああっ! なんてことを!」
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