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「良かった、本当に良かった……エディが生きてる……!」
ヨースケは私の頬に、濡れた頬を擦り寄せてくる。
「エディ、抱っこして」
甘くねだられて胸が震えた。
だが、それでも体がうまく動かない。
「すいません、なんだか、体が……」
「え?」
ヨースケは飛び起きて、心配そうに私を見下ろした。
かわいい。
もとからきれいな子だったが、今はいっそうかわいく見えてしょうがない。
涙にぬれた瞳も、少し赤い鼻も、子供のように開かれた口も。
私は目を細めた。
「ちょっと、体が動かなくて……。ヨースケがキスをしてくれたら動けるようになるかもしれま…………んっ……」
言い終わる前に、柔らかな唇が吸い付いてきた。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音を立てて、何度も繰り返しキスされる。
「んん……好き……エディ、好き……んう……大好き……」
水音と息継ぎの合間に想いを告げられ、多幸感のあまり体が空へと浮いていきそうだ。
「これは、私の死ぬ前の夢でしょうか」
ヨースケはきょとんと私を見た。
「エディは死なないですよ。もう『名前』も呪いも消えたから」
「消えた」
「はい、ぜーんぶきれいに消えました」
嬉しそうに、そして少し誇らしそうに、ヨースケは言った。
そこで初めて、私は自分の胸の中にあったものがすっかり無くなっていることに気付いた。あれほど重く苦しく圧し掛かっていたものが、そして同時に溢れるほどの魔力をもたらしていたものが、いまは完全に消滅している。
私はやっと思い出した。
『名前』の力を制御できなくなった私は、それを次の者へ引き継ぐために世界教会を訪れた。ヨースケには私の存在を忘れさせて、勇者にその身を預けたはずだ。
どういうことだろう。
私はヨースケに忘れられたまま、数日のうちに死ぬはずだった。
だが今、胸の中にあった恐ろしいものは消え、代わりに愛しい人が胸に抱きついてくれている。
いったいどんな奇跡があったのか。
いや、ヨースケが何かをしてくれたのか……?
それを聞こうとした時、ヨースケの両手が私の頬を包んできた。
温かくて、柔らかい手のひらの感触が嬉しい。
「ねぇ、エディ。エディは僕のものですよね」
私はうなずいた。
「はい。私はヨースケのものですよ」
「僕に全部くれるって言っていましたよね」
真剣に確認してくる様子が非常にかわいらしい。
この子のためなら命も捧げられる。
「ええ。私の持っているものは全部、髪の毛一本に至るまですべてをヨースケに捧げます」
嬉しいのか、ヨースケの目がまた涙ぐむ。
「じゃぁもう二度と、どこかへ行ってしまわないで。絶対にもう僕から離れないで……」
切ない声で、嬉しいことを言う。
私も同じ。
どこにも行きたくないし、離れたくない。
許されなかったはずのそれが、今、許されるというのなら。
まるでこの世の幸福のすべてが私に降り注いでいるかのようで、嬉しすぎて溶けてしまいそうだ。
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