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小さな本屋はいつも暇そうで、先ほどみたいに一人のお客に声をかけれてしまうぐらい店員さんには時間がある。だから、私はまた本屋に訪れた時に、今日のように暇そうだったら今度はこちらから声をかけようと思ったのだ。
――きっと、刺激を求めていたのだろう。
変わらない日々の、小さな刺激と楽しみ。
何気なく入った本屋は、人がいないから、という理由もあった。
もしかしたら私は、無意識にこういう出会いを求めていたのかもしれない。
「勿論、いいですよ。むしろ、お待ちしてます。……えぇ、と」
「愛です。方森愛」
「方森さんですね。覚えました。またのお越しをお待ちしております」
営業トーク、といえばそれまでだけど。
特別扱いをされたような錯覚に浸りこんだ私は「はい、また来ます」と笑って、本屋を後にした。
……その日、家に帰って、いつも通りの家事を早めにこなした私は。
数時間、本に浸った。
本は、とても面白くて、夫が帰ってきた後も、最低限の会話をすませたらまた本に没頭した。
「そんなに面白いのか?」
「うん」
「ふぅん」
それ以上夫は興味を示さず、部屋に引っ込んだ。
夫婦別室だからこそ、没頭できる時間があるのは有難かった。
私は、端下君がオススメしてくれた1ページの文を指でなぞる。
「“どんなアナタでも、僕は好きでいます”」
こんな風に言ってくれる人がいれば、どれだけ嬉しいだろうか。
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