また一歩、前進

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また一歩、前進

 沢山お酒を飲んだからか、トイレに行きたくて早めに目が覚めてしまった。まだ伊織は寝ていたし、2回目の寝顔拝見だと妙にテンションが上がったのはまだ少しだけアルコールが残っていたからか。  俺はこっそりとベッドを抜け出して、少しふらつく足でトイレへと向かう。そこで用事を済ませてズボンを上げようとしたところで、ようやく自分は下を履いていないのだと気が付いた。 「んー……なんで俺、パジャマの上しか着てねぇの?」  酔っていたから記憶が無い。  篠崎の部屋から帰って来て早々、伊織に風呂に入れてもらったのはなんとなく覚えている。その時に下着とか着なかったっけ?と首を傾げるが、記憶も曖昧なのに答えが出て来るはずもない。  俺は手を洗いに洗面所へ行ったついでに、畳んで置かれていたパンツを見付けてそれを履いた。ズボンも探すが途中で眠くて面倒になり、すぐに諦める。  ……とりあえずパンツは履いたからいいや。まだ眠いし、もうひと眠りしよ。  寝室に戻ると、伊織がうつ伏せでスマホを弄っていた。液晶画面の光りに照らされていたその表情はまだ眠そうに瞼が半分しか開いていなかったが、俺が戻って来たのを悟ると「おかえり」と寝起き特有の掠れ声で迎えてくれる。 「ただいまぁ……もう起きるのか?」  布団に入りながらそう尋ねると、彼はスマホの電源を切りベッド横のチェストに置いては俺の方に向き直った。 「いや……今日は昼から日雇いバイトだから……まだ起きない」 「……今日はなに?」 「工事現場の警備。夜の7時には終わるから」 「そっか」  伊織は俺と同棲すると決めた時から、居酒屋以外にもこうして単発でバイトを入れたりしている。金銭面ならもうちょっと大人の俺に頼って欲しいものだが、彼には彼なりの事情があるようだ。それに俺が口出しするのもどうかと思うので、今のところは黙って容認している。  ふと伊織の腕が俺の腰を抱き寄せては、パジャマの中に手を滑り込ませて来た。そのまま背中や尻を撫でられて、頬にキスまでされる。 「……晴弘さん、酔いは醒めた?」 「んっ……多分……。まだちょっとふわふわするけど……」 「ねぇ……エッチしない?」 「え……い、今?」 「うん。だって俺、昨日の夜すげぇ我慢したし……偉くね?だからさ、ご褒美ちょーだいよ」  耳元で囁きながら、伊織は硬くなり始めていたソコを押し付けてくる。  俺はその誘いに満更でもなくて、コクンと頷いては上目遣いに見つめ返したのだ。 「……いいよ。シよ」  そこからはあっという間だった。  前を抜き合った後にキスをしながら丁寧に後ろを解してくれて、お互いにゴムを着け合っては身体を繋いだ。  まだ窓の外が暗いというのもあって、俺達は静かにゆっくりと熱を重ね、愛を育む。 「……はぁ……晴弘さんの中、すげぇ気持ちいい……」 「んん……あぅ……あっ……い、伊織……俺もぉ、いい……っ」 「ん……かわいいよ、晴弘さん……好き」  うつ伏せになった俺の上に伊織が覆い被さり、抱きしめながら腰を動かしている。甘えるように背中に何度もキスを落として、握った手の指は恋人繋ぎをして。  布団の中で素肌を合わせると、なんとも心地の良い感触に包まれていた。  ……そう言えば、伊織とする時はいつも色々準備してたっけ。タオルケットとか、濡れタオルとか。でも、最近では成り行きに任せてする事が多いから、そんな事前準備もしてないな。  伊織の潔癖症が前にも増して軽くなっていると感じるのは、ずっと一緒に居るからだろうか?もしそうだったとしたら……俺にもなにか、伊織にしてあげられる事が増えている可能性がある。 「……晴弘さん?どうしたの、ボーっとして」 「へ?いや……なんでもな、んあっ!」 「じゃあ、こっちに集中して……もうイくでしょ?中がうねってる」 「んあ、あっ!……やらぁ、はげし……んん!」  枕に顔を埋め、出そうになる大きな声を我慢する。それでも良いトコロをトントンと突かれると、すぐに熱が解放された。 「ん、ぅん……っ……んっ!」 「……はっ、声……我慢してんのかわいい……。俺もイくから……っ」  伊織も俺の中に挿ったまま達しては、すぐに竿を抜く。そして俺の身体を仰向けにさせると、ゴムを外してはティッシュでキレイにしてくれた。 「……はぁ……あ……ありがと、伊織……」 「ん、疲れたでしょ?こんくらい良いって」 「……………」  伊織は本当に優しい。だから、俺だって何かを返したいんだ。  俺が見ている前で伊織も自分のゴムを外そうとしている。それである事を思い付いた俺は、彼の手を握っては「あ、あのさっ」と起き上がっていた。 「……あの……もし嫌じゃなかったらさ……それ、俺にさせて」 「え?」 「伊織の、俺がキレイにしたい」  突然の申し出に驚いてるのか、伊織は固まったまま俺を凝視している。  そりゃそうか。今までは、彼が嫌がると思ってそういう事の後始末はほとんど任せきりにしていたのだから。  それでも俺は伊織に近付いて、下から顔を覗き込む。すると一瞬だけビクッと震えた彼は、唾を飲み込み俺の頬をそっと撫でた。 「……晴弘さんがシてくれんの?」 「う、うん……良ければだけど……」 「じゃあ……お願いしようかな」
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