2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
ひとりのままか、ふたりになるか
恋愛ドラマを見ていると、告白シーンに胸をときめかせたり、すれ違いにもどかしくて堪らなくなることがある。
ただ、どんなに心の動きが上下しても、作り話だと分かっているので、引きずることはない。
ドラマならば、の話。
慎二と椎木さんの関係性はドラマのようだと感じた瞬間、なるほどなあと心の底から納得した。
それと同時に、彼らの動向が強く気になるようになってしまった。
彼らを含む数人でアイドル活動して、早五年になる。元から変わった関係性の二人だと思っていたけれど、近頃は、また違った雰囲気をはらんでいるように思えてならない。
俺は彼らのドラマで言ったら、どの立ち位置に準ずるのだろう。モブもいいところだろうか。彼らの視界に俺が入るなんて、指折り数えても片手で足りる。
同じグループだというのに。
椎木さんは慎二を頼りきっている。
いつも、慎二にお前がいないと、お前と一緒じゃないと、と呪いのような台詞を投げかけるのだ。
慎二はつんけんしながらも、なにかと世話を焼いている。
俺は、彼らの間に恋愛が関与していないのが、どうにも腑に落ちないのだ。
『友情というには深すぎる間柄でしょっ、どうなの!?』
そんなヒロインの友人ばりの台詞を言ってるしまったほうが、色々と手っ取り早いんだろう。けれど、それではつまらないと思う自分がいた。
「勇気。考え事?」
「考え事の一つや二つ、俺もするよ」
「ふぅん。ね、そのお菓子食べていい?」
「ああ……それはだめ」
「あー! あと少しだったのに」
メンバーの一人がなにかをブツブツ呟きながら楽屋を出ていった。入れ替わるように『彼らの片方』が入ってきて、椅子に深く腰かけた。
そういえば、と今日一緒の収録だったことを思い出した。
なんとなく握りしめていたチョコレート菓子を一言二言添えて差し出す。すると心底嬉しそうに包み紙を開けて食べ始めた。
そんな様子を見ていたら、我ながら悪いことを思いついた。頬骨が上がる。そんな様子を見られていたらしく、不審そうな顔で見上げられた。すかさず気にしないでほしいと微笑んだが、余計、怪しく見えただろうか?
最初のコメントを投稿しよう!