ひとりのままか、ふたりになるか

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ひとりのままか、ふたりになるか

恋愛ドラマを見ていると、告白シーンに胸をときめかせたり、すれ違いにもどかしくて堪らなくなることがある。 ただ、どんなに心の動きが上下しても、作り話だと分かっているので、引きずることはない。 ドラマならば、の話。 慎二と椎木さんの関係性はドラマのようだと感じた瞬間、なるほどなあと心の底から納得した。 それと同時に、彼らの動向が強く気になるようになってしまった。 彼らを含む数人でアイドル活動して、早五年になる。元から変わった関係性の二人だと思っていたけれど、近頃は、また違った雰囲気をはらんでいるように思えてならない。 俺は彼らのドラマで言ったら、どの立ち位置に準ずるのだろう。モブもいいところだろうか。彼らの視界に俺が入るなんて、指折り数えても片手で足りる。 同じグループだというのに。 椎木さんは慎二を頼りきっている。 いつも、慎二にお前がいないと、お前と一緒じゃないと、と呪いのような台詞を投げかけるのだ。 慎二はつんけんしながらも、なにかと世話を焼いている。 俺は、彼らの間に恋愛が関与していないのが、どうにも腑に落ちないのだ。 『友情というには深すぎる間柄でしょっ、どうなの!?』 そんなヒロインの友人ばりの台詞を言ってるしまったほうが、色々と手っ取り早いんだろう。けれど、それではつまらないと思う自分がいた。 「勇気。考え事?」 「考え事の一つや二つ、俺もするよ」 「ふぅん。ね、そのお菓子食べていい?」 「ああ……それはだめ」 「あー! あと少しだったのに」 メンバーの一人がなにかをブツブツ呟きながら楽屋を出ていった。入れ替わるように『彼らの片方』が入ってきて、椅子に深く腰かけた。 そういえば、と今日一緒の収録だったことを思い出した。 なんとなく握りしめていたチョコレート菓子を一言二言添えて差し出す。すると心底嬉しそうに包み紙を開けて食べ始めた。 そんな様子を見ていたら、我ながら悪いことを思いついた。頬骨が上がる。そんな様子を見られていたらしく、不審そうな顔で見上げられた。すかさず気にしないでほしいと微笑んだが、余計、怪しく見えただろうか?
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