悪魔との出会い

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悪魔との出会い

今、私は会社の資料室にいます。 佐伯 奈央(さえき なお)23歳。 うちの会社の資料室は奥にパソコンブースがある。 私はそこで昔のデータを探しに来ています。 資料室が2つあって、こっちの資料室は古いものが多くあまり人が来ない。 そろそろお昼休みだから、自分のデスクに戻ろうと片付けをしていたら 急に物音と人の声が聞こえてきた。 『ん?誰かきた??』 物音と声の方へ耳を向けると聞いてはいけない会話が聞こえてきた。 「あなたが好きなの。私のこと抱いて」 「ここで?・・・じゃあ。早く脱げよ。」 「そんなに急がないで。キスして欲しいわ。」 『えーーーここでそんなことしないで』 「なんでキスすんの?」 「なんでって愛し合うのにキスは必要でしょ?」 「愛し合う?何言ってんの、愛してねえし」 「え?」 「俺としたいだけだろ?」 「そんなーー好きだからよ。」 「会社でさかってる女に興味ないけど?」 『うわーーーひどい』 「じゃあ何でここにきたのよ!」 「お前が誘ったんだろ!」 「ひどいわーそんな人だなんて思わなかった」 「勝手にイメージつけてるのはそっちだろ?」 「・・・・」 「用が終わったら出てけよ」 「言われなくても出てくわよ!」 『は・・よかった始まらなくて。早く出てってくれないかな・・・』 ドン、バタバタ・・・・ 『やっと行ったみたいだね。』 「で、お前は何してるんだ」 「ヘ?」 気が付くと目の前にひどい事を言っていた声の主がいた。 「今の聞いてただろ。佐伯」 その声の主は・・・うちの会社でイケメンだけど冷酷な悪魔と噂の 金井 諒(かない りょう)32歳 同じ部署で上司。 「は・・・い。でも金井さん達が急に入ってきただけで私は 仕事をしていただけですよ」 「俺の事知ってるんだな」 「知らない人はいないんじゃないでしょうか」 「あっそ」 「女の人かわいそうですね。」 「告白してきて、こんなところでSEXしたいとかおかしいだろ?」 「まあ・・・でも金井さんとそういうことしたってなると自慢できるんじゃ ないですか?」 「自慢??なんで」 「金井さんは自分が会社でモテるのを分かってないんですか?」 「俺が?モテてるっていうのは琉(りゅう)みたいな奴の事をいうんだろ?」 諒というのは、同じ会社にいる金井さんの弟の事。金井さんの3つ年下の 29歳。こちらはイケメンで優しく天使と呼ばれている。 「ここの会社の女子は金井兄弟と付き合いたいって言ってますよ」 「お前もか?」 「いいえ。私にはちゃんと彼氏いますから」 「なるほど・・そいつどんな奴?」 「私の事なんか気になりますか?」 「なるから聞いてるんだけど?」 「なんでですか?」 「お前の事、好きなんだよ」 「は??何を冗談言ってるんですか?今まで全然からみもないのに」 「お前は俺を知らなくても俺はお前をずっと見てた」 ???わけが分からない・・・・。 「とにかく、私には彼氏がいますので・・・失礼します」 私はそう告げて資料室を出た。 びっくりした・・・。 午後はあっという間に過ぎていった。 定時になってロッカーでメイクを直して会社を後にする。 今日は彼とデート。 私の彼は2つ年上の25歳。太田 拓海(おおた たくみ) 付き合ってもうすぐ2年。IT関係の会社に勤めていて、とーっても 優しくて素敵な彼氏。 「奈央!」 「たっくん!出張おつかれさまー」 「疲れたよーー。奈央で充電させてー」 「いいよーー」 「夕飯、何を食べたい?」 「そうだな・・・。たっくんの好きなのでいいよ!」 「そっか・・・ラーメン食いてー」 ラーメンか・・・・おしゃれなお店に行きたかったなあ・・・。 「嫌そうな顔してんな!」 「してないよ。」 「そっか。じゃあ行こうぜ」 と私の肩を抱いて歩き出した。 ラーメンを食べて、これからどうするのかなって思ったら 「ホテルいこ!奈央が食べたい!」 「う・・・ん」 「したくないの?」 「そんなことないけど・・・」 なんかいつものパターン。2年もたつとこんななのかな? 「じゃあいこうぜ」 と私の手を引いてホテル街に連れていく。 「どこがいい?」 「どこでもいいよ。」 「そっか」 と拓海くんに連れられていると、向こうから見たことのある男の人がいた。 『悪魔だ・・・知らないふりしとこ』 金井さんが女の人とホテルから出てくるところだった。 『あの女の人って・・・総務の子だったような・・・・見てない見てない』 次の日、出社してすぐに金井さんが私のデスクに来た。 「お前、昨日会ったよな」 見てたんだ・・・・・。 「なんのことですか??」 「しらを切るのか?」 「金井さんも女の人と一緒でしたよ。彼女ですか?」 「そんなんじゃない」 体だけの女?モテるからって・・・・。 「お前さあ顔に出すぎ!」 「ヘ?」 「渋い顔して、どうせ体だけとか思ってただろう」 「いえ・・そんなことは・・」 「バレバレだよ。誘われただけでやってねえよ。俺はお前の事が好きって いっただろーが」 「あれって本気だったんですか?」 「人の告白を・・・本気に決まってるだろ!ってか、女ってなんであんなにガツガツくんの?」 「女はみんなガツガツじゃないですよ」 「めんどくせえなあ。」 「あの用事がすんだらデスクに戻ってくださいよ」 「なんで?」 「女の人の視線が痛いです」 うちのオフィスはオープンオフィスですべての部署が一緒のフロアにある。 各部署の女の人達は金井兄弟しかみていないので、一気に視線が集まる。 「はいはい」 といいながら私の耳元で 「俺はお前を絶対にものにするからな」 と言って自分のデスクに戻った。 悪魔のきまぐれに決まってる。 私にはたっくんがいるんだから。
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