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こんな耳も頭も腐るようなクイズばかり出されて数年。俺は一度も正解出来なかった。
「もう、何で受け攻めなんて二分の一の答えなのに全部外すわけ? 凄い確率よ」
「前から言いたかったんだけど、俺の答えの逆をわざと正解にしてからかってるだけじゃないのか?」
「違うよ。これはアンタが腐男子になりきれてないから分からないだけよ」
腐男子とは腐女子の逆でBL系作品を好む男性のことである。
「なりたくねえよそんなの」
「あたしが何年もかけて開発してるのに」
「開発とか言うな! せめて調教とか他に言い方があるだろ」
しかし「開発」の意味がわかるようになった自分が怖い。徐々に徐々に腐男子の道を歩んでいるのではないかと自分が心配になる。
「調教って言い方がエロい」
こいつに言われたくない。
「それにアンタの開発は健康診断の前立腺がんの触診で終わってるじゃないの、どこの馬の骨とも分からない女医に開発されたって聞いた時はあたし泣いたんだからね! あたしが開発しようと思ったのに」
こいつ、俺に何するつもりだったんだ。前立腺がんの触診は男性医師の太い指でゴリゴリと広げられる痛みに耐えるか女性医師の細い指で痛みこそ少ないものの羞恥心に耐えるかぐらいしかない。俺の時はたまたま女性医師しかいなかったから仕方なくだったんだ。それを責められる言われはない。むしろ、男性医師だったらどんな反応をしたのだろうか。これで喜ばれたらそれはそれで悲しい。
「お前がこんなんだからさぁ…… 家に友達も呼べねぇんだぞ…… たまには家で友達とビール飲みたいとか思わね?」
正直、友達を呼んだら嫁は猫を被ってくれるとは思うが…… どこか不安だ。
「え? アンタ友達いたの?」
「いるよ! 失礼だな」
忘年会や新年会以外では帰りが遅れることもないし、通常の飲み会にも行かないし誤解されるのは当然かもしれない。だが、そんな俺にだって友達ぐらいはいる。
「連れてきなさいよ! で、どっちが受け攻めかしら!」
嫁は満面の笑みでサムズアップを出した。いい加減にしろよこいつ。
「やっぱり男は男同士交際するのが男女交際の正しいあり方よね」
男女交際と言うのは、男が女と交際するって意味だ。嫁の言うそれに女はいない。これじゃあ交際にならないぞ。そこで俺の中に一つの疑問点が頭を擡げてきた。
「じゃあ、お前は女は女同士で男女交際することが正しいあり方だと思うのか? 俺に男は男同士の男女交際を推奨するならお前が手本見せてみろよ」
こうして煽ってみることにした。これで実際に女に寝取られたら俺は発狂するだろう。その逆もまた然りだ。これで少しはこいつの腐敗がどうにかなれば良いのだが。
嫁は天を見上げ暫く考えた。
「あたしは男女含めてアンタ以外に好きな人なんていません。でも男同士の恋愛を見るのも同じぐらいに好きなんです」
俺は唖然とした。俺の事は好きだが同じぐらいにBLが好き。全く以て理解が出来なかった。
「じゃあクイズだすね。超ウルトラスーパーサービス問題。正解しなかったら明日離婚届ね」
超が二回入ってるぞ、語彙が小学生並なのか? こいつ。
「何だよ」
「私達、どっちが受けで攻めでしょうか」
俺は初めてクイズに正解した。
おわり
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