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たぶん、からかってるだけ
俺の嫁は所謂腐女子と呼ばれる存在だ。
腐女子とはBL系作品を好む女子のことである。
5年もの付き合いでやっと結婚に至ったのだが、その結婚生活は腐女子と言うものが全く以て理解出来ない俺にとって毎日が困惑の連続である。
その困惑する生活の中から一部を選んで話したいと思う。
町中を二人で歩いていると、嫁が唐突にクイズを出してきた。
「ねぇ、今目の前に学ランの中学生が二人歩いているじゃない?」
後ろ姿しか見えないが、今俺達の前を歩いているのは町中にある中学校の生徒二人だ。
右の少年は学ランの上からでもわかる筋肉質の体育会系、左の少年は細身の文化系だった。
「どっちが受けでどっちが攻めか気にならない?」
ならねえよ。
俺の嫁の脳内では男同士二人で歩いているのを見るだけでBLの関係に見えてくるらしい。見えられた方からしたら迷惑極まりないものである。ちなみに受け攻めと言うのは挿入られる方と挿入る方のカップリングの関係を現す言葉らしい。別名でネコとタチと言うらしいが…… 俺にはさっぱりだ。
「いや、別にどっちでもいいだろ。こんな関係の中学生がこんな町中歩いてるわけが無い」
「私の中では歩いてるんです。良いからどっちが受けか攻めか答えてちょうだい」
私の中とは言うが嫁入り道具の中に混じっていた薄い本の中の世界だけじゃないのだろうか。ちなみに薄い本とは成人向け二次創作同人誌を指す隠語である。俺も嫁と結婚する前に夏と冬に有明に早朝から呼び出され、その薄い本の購入の助っ人として駆り出され報酬としてその薄い本を貰ったのだが、全く以て理解出来ない世界だった。子供の頃に見ていた憧れの漫画キャラが男同士であんなことやこんなことをしているのを見た時は何とも言えない気分になったものだ。
ここで答えないと機嫌が悪くなり小遣いにも影響してくるので答えざるを得ない。すまない、目の前を歩く少年たちよ、君たちがそんな関係ではないと思うが一時的にそういう関係にさせてくれ。
「えっと、右が攻めで左が受けかな?」
無難な答えだった。
「外れ! 筋肉くんが受けでガリ勉くんが攻めに決まってるじゃない! 私の夫を何年もやってるのにそんなことも分からないの?」
分からねぇよ! ほぼノーヒントだろ! 多分百年あなたの夫をやっていてもわからないと思うぞ。
「右の少年は家庭がうまくいってないのよ、それを左の少年が慰める為に攻めに回るのよ! 尊いと思わない?」
俺の思う尊いと嫁の尊いは何か根本的に違うようだ。当たり前だが全部嫁の妄想で勝手に設定したものである。
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