オマケ とある一日

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街から外れた山側にある、小川 この時期は渡り鳥の水鳥が居る為に、ボリスはそれを見てるのが好きな様子 というか、本能が掻き立てられるのか凄く捕まえたそうな雰囲気の為にリードを短く持っては、引き止めていた 「 ボリス、向こう側に広場がある。少し遊ぼう 」 遊ぼうって言葉に反応したボリスは、水鳥から顔を背けて広場の方へと向かった 人がいないのを確認し、リードの紐を外しては、ポーチに入れていた公式のテニスボールを持ち、それを遠くへと投げた 追い掛けて取りに行くボリスの後ろ姿を見れば、少しだけ寂しく思う ゙ アンタがαでもない只の男のせいで、彼奴は子孫が残せない。一族が滅んだらお前のせいだ ゙ ボリスと一緒に過ごして2年目になるが、 彼奴に子供が出来る形跡は無かった 刑務所に入ってる彼の兄に聞けば、俺が只の人間の男だから、ボリスがΩであっても繁殖出来ないと言われた ボリスが繁殖するのは、αのオスか、αのメスのみ 彼奴は一族が滅ぶ事を望んでは無かったのに、俺と暮らし付き合ってることで、その望みは消えるのかも知れない   いつか、俺に愛想を尽きて離れてしまいそうな感じがするのが、不安だ  「 ボリス、そっちにボール行って……ボリス!! 」 そのいつかが、やって来てしまったのじゃないか 飛ばしたボールを追い掛けていたはずのボリスは、何を思ったのか走り出した 遠退く背中に焦って、リードを握ったまま追い掛ける 何処にも行かないでくれ!! 子孫を残せてやれなかったのは申し訳ないが、それでも…俺を一人にしないでほしい! 鼻先が痛む感覚をグッと堪えれば、ボリスは背の高い雑草の中へと身体を突っ込んで行った 「 ボリス?何かを見つけたのか? 」 逃げるにしては探し始めたように、雑草から顔を出しては、また埋めては、匂いを嗅いで進んでいくのを見て、急いで草むらに近づけば、ボリスは何かを見つけた 「 段ボール箱? 」 配達の箱なら80サイズ程度の小さな箱に、ボリスは開けようと片手を動かして引っ掻いていれば、俺が来たことに気付いたとの同時に顔を上げた 「 それ、任せた 」 「 え、ちょっ、ボリス! 」 また草むらから出たボリスに驚き、咄嗟に箱を片手で掴めば少し重みがある事と中身は偏った 「 何か入ってる?って、ボリス! 」 これはなんだ?と言おうとすれば!ボリスは河川敷の上に止まっていた車が動き出せば、それを目掛けて走った まさか、と思った時には全身の血の気が引いた 「 ボリス!!! 」 車の前へと飛び出したボリスに驚けば、車は咄嗟に急ブレーキをかけたのか止まった 急いで坂を上って行こうとすれば、車から人が降りてきた そこで俺は、気付いた 「 うぁぁっ……!私だって、捨てなくないわよ!!でも、知らないオスの子なんて、誰にも、見せたくはないの!! 」 箱の中には生後五日目そこ等の目の開いてない仔犬が一匹入っていた この女が言うには、夫が飼っているシェパードのメスが、脱走したときに雑種との子を身籠ったのか、子供が生まれたらしい なんのオスかも分からず、血統書のあるシェパードが産んだ子供が雑種であることを認めたくないと…… 四匹生まれた内の三匹はすでに別々の日付と場所に捨てたらしい そして、最後の一匹を捨てに来たときに、俺達に出会ったんだ 余りにも身勝手に命を捨てる女に、何も言うことが出来なかった 「 ……うぁぁぁ……雑種なんて、認めたくないわ……!! 」 血統書がある事にプライドがある飼い主が、雑種の子供が生まれれば、捨てたり、保健所に持っていくはあるだろう だが、産んですぐに子を取られたメスは… きっとこの飼い主に心を許すことはないと思った この飼い主の為ではない、メスと、仔犬の為に俺は口にする 「 もう、泣かないでくれ。この子は俺が預からせてもらう。ただ、里親に出すかもしれないがな 」 「 っ、構わないわ……好きにして頂戴…… 」 「 後、そんなに泣くならメスの子を、避妊してやってくれ。それは飼い主の責任だ 」 話す気は無かった為に、箱に入った仔犬を片腕に持ったまま不機嫌そうなボリスのリードを引き、歩き出す 女はその場で落ち着くまで泣いていただろうが、如何でも良かった  それより仔犬が気になるのか、チラチラこっちを見上げるボリスへと視線を落とす 「 よく鳴かない仔犬だったのに気づいたな。はぁー…散歩は中止だ…病院に連れて行く 」 楽しい散歩は終わりを告げる 先に、この仔犬に病気やら無いのを調べる必要があると、 ボリスは自分も病院に連れて行かれるんじゃ無いかと思ったのか、耳が無くなって見える程にペタリと後ろに下げ、尻尾は腹側へと回していた 余りにも悲しそうに歩くから、 通行人から心配されたじゃないか
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