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「武器は……初期でAランクの槍か、氷属性魔法付与ということは物理無効にも多少ダメージはあるか。 武器スロットは2つ、今は……もちろん空だな」
武器はそれ相応。
防具も同等程度で物理攻撃半減など戦闘向きなものだ。
『荒白の主へ伝達。 英傑「ラフィリア」がクエストを達成。 そのまま荒城へ向かっています、迎撃してください』
思った以上のペースでこちらに向かってくる。
初日から攻略を進めるのはおおいに結構だが、舐められて低評価をつけられるのも癪に障る。
ここは全力で迎えうつとしよう。
「モンスターを3体分空けといてよかった」
さてと、初日となるとあちらは小細工のできる防具などはもっていない。
蹂躙させてもらおう。
「こいつらを召喚してと……」
よしよし、問題なく召喚できたので、迎撃しようか。
「それじゃあよろしくね、ワイバーンくん」
召喚されたワイバーンは高らかに吠えた。
このエリアにドラゴン種は配置していない。
ゆえにその咆哮を聞けば、攻略厨は寄ってくる。
「先陣は僕が。 ワイバーンは後方支援を、と」
ワイバーンに指示系統を与えることで戦闘の配置を決める。
ズドンッ。
轟音とともに森の木が倒れる。
どうやらラフィリアもヘイトを誘っているようだ。
視界の悪い森の中はワイバーンの援護を受けるには悪くない。
「ようこそ、気高き英傑よ。 好き勝手した償いは晴らしてもらうぞ」
ゲームらしいセリフは小っ恥ずかしいが、盛り上げる為にも必要なことだろう。
「お前はボスキャラか?」
森の茂みから現れた僕に声をかけてきた。
余裕があるのか、馬鹿なのか。
「いかにも」
「そうか、ならば死んでもらう」
会話のノリは悪くないけど、やけに高圧的だし、やはり舐められてると見てよさそうだ。
「ストームスラッシュ」
「んっ?」
いきなりそれを出しちゃうのか。
「死ね!」
距離を詰めてくるのは有難い。
こちらも近接戦闘向きだし、そうするつもりだったけど。
「ちょっと様子を見るか」
距離を詰める分、後方に下がった。
「なっ……!? 逃げるな!」
「NPC相手ならまだしも、ボスにそれは悪手だろ」
剣を振るいながらも、半歩届かない距離を保ち、安全に時間を稼ぐ。
無限に使えるスキルなど設計されていないはず。
どんなに英傑といえど、SPには限界がある。
この様子だと、レアジョブの熱にあてられて、無茶な戦い方でここまで来たから、ペースも早かったのだろう。
「くっ!」
ラフィリアの体からスキル使用時特有の光が消えた。
「もう少し楽しめると思ったんだけどな、この程度の知恵しかないなら僕1人でも行けたか」
森を抜け、薄暗い荒城の切り立った崖の下へと呼び込んだ。
月光に照らされた荒城の主は、漆黒のマントを揺らめかせて槍を構える。
その頭上にも浮かび上がる槍が3本。
「君の獲得した経験値、返してもらおう」
荒城の主の甲冑は黒光りし、姿勢を低くとる。
何故かというとよく映えるから。
大地を掴む左足を後ろに下げて、しっかりと踏ん張る。
「押して参るぞ、少年」
大地を蹴った瞬間、ラフィリアへ直線的に槍による牙突を放つ。
間一髪避けたラフィリアは多少体勢を崩しながらも、その剣の切っ先を僕の首元へ。
センスはよし。
キーンッ――。
空中の槍が剣を止める。
スペアランサーはこの槍を自在に操作できる。
ゆえに近接とともに中距離戦闘も可能としている。
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