8人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はなにをするかと言うと、プレイヤーに扮して情報収集だ。
会社側に頼んで偽装を可能にしてもらったが、諸々の可能性を踏まえて、有事の際のみ使用可能な偽装アイテムを採用してもらった。
楓の叫び声を背中に受けながら、心の中で応援しながら、僕は王都エリアへ潜り込む。
今回は料理人として、空き家に急遽店を構えた。
「さてと、開店時間は18時にしておいてと」
無意味に行動をすると勘づかれた際に警戒を強めてしまう為、動かず情報が集められる酒場、という形態を選んだわけだが。
「ターゲットを絞らないとなかなか難しいか」
配膳として、聴覚強化を備える獣人族を雇い、細かい事情は抜きにして、「物騒な話」をしている際の合図を決めておいた。
「よろしくお願いします♪」
明らかに若そうでノリ重視な気はするが、そこは聞かずにいておこう。
それよりも。
「君、それなんの獣人?」
「あっ、やっぱり気になります?」
「うん、だって特に見た目で判断出来ないんだけど」
この子はウララさん。
募集に飛びついてきて、そのまま流れで雇ったが、幾分、見た目は普通の人間。
「じゃあちょっとウララのここ、触ってもらっていいですか?」
自分のことを名前で呼ぶタイプなのは把握出来た。
言われるままにここ、と言われたおでこを押してみる。
ほどよい弾力と、沈み込むような柔らかさ。
「もしかしてこれ、シロイルカ?」
「そうです! さすが店長♪」
「いや、ニッチすぎるだろ」
「えっ、でも気持ちよくないですか?」
「まぁ、否定はしないけど」
「ちなみに一応尾ビレもあるのでスカートの中見たらわかると思いますけど♪」
「まって、それは犯罪になるから辞めとこう」
見た目はとにかくシロイルカというと可聴域が1000Hzから130000Hzという人間とは比べ物にならない聴覚をもつ。
ちなみに人間は20Hzから20000Hz程度。
その聴力は水中なら見えない範囲も余裕で補える範囲の僅かな音も聞き分ける。
最初のコメントを投稿しよう!