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「とりあえず上手に確保、他のお客さんは適度に退出してもらいたいね」
「あ、了解でーす♪」
軽率な返答に心配したが、その後も何事もなくウェイターをこなしてくれていた。
何をするつもりなのか、拝見させてもらおう。
僕はこのお客さんを適度に居座ってもらう為に試行錯誤することにした。
「それにしてもプレイヤー狩りとは物騒ですね、あっ、これ、サービスのお浸しです」
「あっ、すいません。 いや、ほんとにね、それにかなり強いらしくてですね、なんでもギルドが幾つか壊滅寸前まで追いやられてるみたいですよ」
ギルドも相手にするとなると、隠密で行動という訳でもないのか?
もしくはそこに大きな目的があった?
「プレイヤーはなにか取られていくんですかね? あっ、氷足しときます?」
「いいですか? 助かります。 それはないみたいですけどね、人を探している感じだったみたいですよ」
「人?」
「んー、よく分からないんですけどね、プレイヤー狩りされた人の中にはログインしているけど姿を見せなくなった人もいるらしいんですよ」
可能性は多岐に渡るが、おおよそ勢力拡大か。
宗教的な会話から人の心の隙をついたり、腕はたつが目立っていない者に甘い汁を吸わせるとか言って勧誘しているのではないだろうか。
「ゲームが嫌になっちゃったんですかね、たしかに胸くそ悪い話ではありますよねー」
酔いが回って饒舌な男。
頬ずえをついて、耳を赤くしているその姿に敵意はなさそう。
嘘もついていないだろう。
「店長さんも気をつけないと駄目ですよ! このラガーは他のとこのよりうまい! 愛されるべきラガーです!」
突然話が脇にそれてきた。
どうやら限界か。
ウララさんがうまくお客さんをカウンターから遠ざけるように配置してくれていることに今更気付いた。
それに人数も減っている。
残っているのもどうやらウララさんに目をつけた暇な男達のようで、こちらに関与はしてこなさそうだ。
「それにしても飲みましたね、ゲームとはいえ、一応酔いを再現してるからふらつくでしょう?」
「いやいや、自分現実では未成年だからもう大人になれた気分で嬉しくて嬉しくて」
いい大人はそんな潰れ方はしないだろう。
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