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「甘く見た罰だ」
「くっ……! もう1度だ! ストームス――」
「甘すぎる。 隙だらけだ」
空中の槍に気を取られている隙に懐に潜り込む。
近接では突きは出せない。
だがここで活きるスキルもある。
「スキル、なぎ払い」
通常STRを1.5倍に強化して槍の槍身で殴りつける。
「ぐはっ……」
凄まじい勢いでラフィリアは崖に叩きつけられた。
思った以上の威力に僕自身やや引いているが、英傑のVITが低いのだろう。
「我が眷属の怒りを知れ」
身動きの取れないラフィリアの頭上にワイバーンが口を大きく広げて3方位から火炎を放とうとする。
「些かおふざけが過ぎたな、人間よ」
気持ちが乗ってきたのか恥ずかしさはとうに消えていた。
「く……くそぉぉ!」
ラフィリアの叫びとともにワイバーンの火炎がラフィリアを燃やし尽くす。
『英傑「ラフィリア」は死亡。 王都初期配置へ戻されます』
「ふぅ。 脳筋プレイヤーで助かったよ」
槍を降ろして、肩を回す。
ゲームとはいえ、リアルな感覚に肩が凝る。
『荒城の主のレベルが上昇。 レベル1からレベル4へ上昇を確認。 眷属ワイバーンのレベルが上昇。 レベル1からレベル3へ上昇しました』
「ふむ、そういえばサービス側にもレベルがあるんだったか」
ステータス確認でもしておくか。
「ステータス、ON」
やはりSTRとAGIが高い。
そして新しいスキルも追加されている。
「英傑があれなら、ひとまず一時は安泰だな、お前達もよくやってくれた」
ワイバーンの鼻先を撫でると、嬉しそうに喉元を鳴らしてくれる。
ゲームという感覚を失いそうだよ。
『王都エリアにて「勇者」が誕生しました』
サービス側からの間髪入れない通知、まだまだ休む暇はないか。
「ひとまず得られた経験値をポイントに変換して、モンスターの配置しなおしだな」
ワイバーンはゴロゴロと唸りながら、頭を垂れた。
「さてさて、このゲームの良さにみんな気付いてくれるかな」
ワイバーンが首を傾げるのを眺めて、月を見上げる。
「さぁ、城に戻ろうか」
まだまだ始まったばかり。
サービス側のボスキャラとしてやれることをまず探さなきゃならない。
勇者……曲者じゃないといいな。
薄暗い城下に咲く灰色の花びらは、静かに揺らめいて、短い平穏に踊り明かしていた。
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