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三枝 千諒。
彼は小中学校の頃の同級生で、地元でデザインに関わる仕事をしている人間なら知らない人はいない。
飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している、地元でも有名な若きクリエイター、デザイナーだ。
県内の商品で、
〝このデザイン素敵、生まれ変わって生き返ったな〟なんて思うと、大抵ハコニワさんが関わっている。それもワンパターンではなく様々なやり口で、商品自体も話題になるという、とにかく地元に留まらずデザイナーの間では憧れてしまうような会社だ。
そこの代表が三枝君だという事は知っていたけれど、恐れ多くておいそれと声をかけられる様な存在ではなかった。同級生がそんな風に活躍する様子を、彼が作り出すものによって知っていただけ。
このタイミングで再会するとか、自意識過剰かもしれないけれど、卑屈になる。
綺麗な立ち姿でキラキラしていて仕事も順調。自信に満ちたできる男のオーラ、その雰囲気に怖気づき、同じ業界で頑張っていましたなんて、胸を張って言えない。
泣いていたのがバレたようで、じっと見られる。早くどこかへ行ってほしいという気持ちと、ダメ元で三枝君に聞いてみようかという気持ちが混在する。
大物過ぎて近付きようがないのに、同級生の気安さで相談したくなってしまった。
知り合いのここの会社いいよ、人募集しているよ、あそこの会社は信頼できるよとか教えてもらえないかと。僅かな希望でもいいからもらえないかと。
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