5.三枝君が王子たる所以 side K

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「久住さ、行くところ、もし当てがないならうちこない?」  一瞬何を言われたのかわからず、心臓がドクドクいい始める。 「俺今、ハコニワって────」  知ってる、知ってる、知ってるに決まってんじゃん!!  いろんな場所で、報われない、上手く立ち回れず損ばかり、もう少し世界は私に優しくてもいいんじゃないか?と思ってきたけれど、その差し伸べられた手を見て、頑張っていればいいことあるのかも……。 そんな気がして涙が出た。 それなりに必死でやって来た私へのご褒美なのではないかと。  三枝君はドン引きで、おいおいって感じだったけれど、もう泣かないと約束する。  通用するかどうかもわからないけれど、お世話になりたいと直ぐに返事をしていた。  雑用でもなんでもやる。一から頑張る。  デザインに関わることが好きだから。  そう思って働き始めて一か月半。  私は途方に暮れている。自分が、ここまで役立たずだとは思わなかった。  三枝君に申し訳なく、肩身が狭い。  入社して直ぐに、女性社員に囲まれる。
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