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「三枝さんて、ロマンチストですよね」
「ロマンチスト?」
数か月前、兄の友人である渡会浩己さんの妹、渡会 陽さんと出会った。
いわゆる『紹介』という形で。
浩己さんは地元商工会の若手のリーダー格で、彼を慕う人は多い。大らかなのに一方では緻密で頭が切れる。男から見ても憧れてしまうような男だ。
その浩己さんの妹でもある陽さんは、偶然にも子どもの頃の顔見知りで、何となく縁を感じ、めずらしく会うことを承諾した。
兄からしつこく「誰か見つけて結婚しろ!」と、言われ続けているせいもあるが。
けれど、会ってよかった。
ああこの子、わかる。知っている。
昔を知っているというだけで安心する。
三つ子の魂百までとはよく言ったもので、
マイペースっぷりは全然変わってない。
*
「ロマンチストなんて言われたことないけどな」
「女性に対して独特な理想がありますし、いつか運命の人がって、王子様を待ってる独身女性と同じ発想ですから」
「そうかな。独特な理想……」
「まあ、ご本人が王子っぽいんですけど」
「え? だっているでしょ? どこかには。運命の相手」
ほらねと、からかうように笑う。
「会えるといいですね」
「……」
あなたが言わないでよ。
わかっていて言っているのか、鈍いのか。
でもそういうところも好ましい。
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