1.三枝千諒のユウウツ

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** 「三枝さんて、ロマンチストですよね」 「ロマンチスト?」  数か月前、兄の友人である渡会浩己(わたらいひろき)さんの妹、渡会 陽(わたらい よう)さんと出会った。  いわゆる『紹介』という形で。  浩己さんは地元商工会の若手のリーダー格で、彼を慕う人は多い。大らかなのに一方では緻密で頭が切れる。男から見ても憧れてしまうような男だ。  その浩己さんの妹でもある陽さんは、偶然にも子どもの頃の顔見知りで、何となく縁を感じ、めずらしく会うことを承諾した。 兄からしつこく「誰か見つけて結婚しろ!」と、言われ続けているせいもあるが。  けれど、会ってよかった。  ああこの子、わかる。知っている。 昔を知っているというだけで安心する。 三つ子の魂百までとはよく言ったもので、 マイペースっぷりは全然変わってない。 * 「ロマンチストなんて言われたことないけどな」 「女性に対して独特な理想がありますし、いつか運命の人がって、王子様を待ってる独身女性と同じ発想ですから」 「そうかな。独特な理想……」 「まあ、ご本人が王子っぽいんですけど」 「え? だっているでしょ? どこかには。運命の相手」  ほらねと、からかうように笑う。   「会えるといいですね」 「……」  あなたが言わないでよ。  わかっていて言っているのか、鈍いのか。 でもそういうところも好ましい。
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