2211人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「あなた、どういうつもりでうちの主人と会っているの?」
ちょっと待って頭が回らずぐらぐらする。
私何をやっちゃったの?
栗原さんを見ると、私と目も合わせない。
温和で優しい、穏やかだと思っていた人。
これから付き合うのかと思っていたのに。
ショックなんだけど、なにがショックなのかもわからない。
目の前の女性をひどく傷つけて怒らせてしまったという後悔と恐怖。
自分自身の浅はかな考えと、私なんてもう、まともに恋愛もできない枠に入ってしまったのだろうかという焦燥感。
「知らなかったです!」なんて、事情を擦り合わせても意味がないと思えた。
謝ったらいいのだろうか。
ごめんなさいは、私なんだろう。
顔を上げると、強い視線を感じてそちらを振り向く。
三枝君……。
三枝君だ……。
見られたくない、こんなの……。
驚いた顔で、こちらの様子を遠くから窺う彼を見て、ものすごく惨めな気持ちになり、我慢していた涙が両目からこぼれ出す。
知らんぷりしてくれていいのに。
わざわざ近付いてくる。
「大丈夫か?」
目の前にいる二人も、私自身も、それから周りでこの様子を気にしながらチラチラ窺っている人達も、三枝君の登場に圧倒される。
最初のコメントを投稿しよう!