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栗原さんには話していた、職場の誰よりも尊敬できる同級生。
眩しい光を放つ、遠くで輝く星のような人。
その人がまた、私の腕をグイっと引いて、立ち上がらせてくれる。
綺麗な白いシャツに、紅茶が染みていく。もう申し訳ないを通り越して、お腹が痛くなってきた。
すぐに状況を把握して、職場の上司として間に立ってくれる。
こんな風に誰かに庇ってもらうような、守られるようなことをされた事がない。そもそもこんなトラブル自体が初めてなのだが。
〝これ以上、ここでお話しする事はありますか?〟という無言の抗議が相手を黙らせ、その場を静まり返らせた。
職場の女性陣が言っていた、三枝王子の意味を初めて理解する。
気が付くと店の外に連れ出され、三枝君に捕獲された人状態で、街中を北に向かっていた。
「久住……」
ごめん。ごめんなさい巻き込んで!
紅茶に染まったそのシャツを見て、胸が苦しくなる。すごくすごく悲しい。
先程までの非現実的な状況を思いながら、目の前に居る三枝君を見て、何故か身体が震え出す。
ほんとに、どうしようもない。
私最悪だ。
紅茶で汚れた三枝君のシャツだけが、気になって仕方が無い。
時間も立場も忘れ、洗濯するからすぐ脱いでと、さらに迷惑をかける行為で頼み込む。
彼の立場も考えず、自宅に招き入れた。
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