5.三枝君が王子たる所以 side K

11/16
前へ
/66ページ
次へ
**  三枝君の白いシャツは、頑張って洗ったけれど、やはりくすんだ色になってしまった。そのまま返すわけにはいかない。  週末、姉と二人でお気に入りのセレクトショップにいた。 結婚して七年近くなる姉とも、前職を辞め落ち着いたことで最近ようやく会えるようになった。  さっきから、あの白シャツに似たようなシャツはないものかと探している。  三枝君は常にお洒落な人だから、私が選んだものなんて要らないかもしれないけど。 「誰の服を探してるの? 彼氏?」 「ちがう。お世話になっている人のシャツ。私のせいでダメにしちゃったから」 「なんだそうなの。これはどう?」 「うーん、シンプル過ぎるかな」 「シンプルなのが一番いいでしょ」  なかなかピンとくるものがない。 「あっ、これ……」  一点物のブルーのシャツ。  これなんか、三枝君ぽい。 「これ? なに、白って言ってなかった?」 「そうなんだけど。これなんか、イメージにぴったり」 「え、何歳? 爽やか過ぎない? 同い年のおっさんでしょ?」 「おっさんなわけあるか」 「そうなんだ。素敵な人なんだね。椿がときめいてるの久々だね。あ、じゃあこっちの白シャツはうちのダーに買ってこうっと」  ときめいてる……?  ちょっと、聞き捨てならない。  そんなんじゃない。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2211人が本棚に入れています
本棚に追加