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三枝君の白いシャツは、頑張って洗ったけれど、やはりくすんだ色になってしまった。そのまま返すわけにはいかない。
週末、姉と二人でお気に入りのセレクトショップにいた。
結婚して七年近くなる姉とも、前職を辞め落ち着いたことで最近ようやく会えるようになった。
さっきから、あの白シャツに似たようなシャツはないものかと探している。
三枝君は常にお洒落な人だから、私が選んだものなんて要らないかもしれないけど。
「誰の服を探してるの? 彼氏?」
「ちがう。お世話になっている人のシャツ。私のせいでダメにしちゃったから」
「なんだそうなの。これはどう?」
「うーん、シンプル過ぎるかな」
「シンプルなのが一番いいでしょ」
なかなかピンとくるものがない。
「あっ、これ……」
一点物のブルーのシャツ。
これなんか、三枝君ぽい。
「これ? なに、白って言ってなかった?」
「そうなんだけど。これなんか、イメージにぴったり」
「え、何歳? 爽やか過ぎない? 同い年のおっさんでしょ?」
「おっさんなわけあるか」
「そうなんだ。素敵な人なんだね。椿がときめいてるの久々だね。あ、じゃあこっちの白シャツはうちのダーに買ってこうっと」
ときめいてる……?
ちょっと、聞き捨てならない。
そんなんじゃない。
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