5.三枝君が王子たる所以 side K

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「お姉ちゃん、そういうんじゃないの。残念ながら、ステージが違う」 「ステージって? ああ、モテる人なの?」 「モテるとかそういうんじゃなくて、私が相手をしてもらえるような人ではない。崇拝はするけど恋ではない」 「崇拝とかステージとか、ばっかだな。同じ人間だっていうのに」  お姉ちゃんはいいよ。 ちゃんと唯一無二のパートナーを見つけて、結婚して数年経ってもラブラブで、子ども達の前でも恋人同士みたいに仲良しで憧れる。  一週間前のあの苦い出来事を思い出すが、苦いは苦いのだが、三枝くんのシャツを汚した事件にすり替わっている。  恋か……。  20代も前半ならば、怖いもの知らずで、三枝君のような人に恋心を持てただろうか。  女性を寄せ付けない、女を感じた瞬間に引き潮になってしまう彼に、間違ってもそんな思いは抱かない。嫌われたくはない。    わかっているもの。現実を。  乾いた笑いが出たけれど、三枝君のイメージのブルーのシャツだけは購入した。 「椿? たまには実家に顔出しなね。前の仕事より大分余裕もあるんでしょう?」 「うん。大分どころじゃないよ。週末はちゃんと休めているし」 「それなら良かった。はいこれうちの味噌。それから甘酒も。ちゃんと味噌汁くらい作って飲むんだよ?」 「ありがとう」
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