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栗原さんからなにか連絡がくるのではと思ったけれど、何の音沙汰もなかった。
私も何も感じていないあたりが最低なのだが、何歳になろうがもう、まぁいいかの恋愛だけは止めようと思う。
一つ一つの事に丁寧に、真剣に。三枝君の様に。彼の前で恥じない人でいたい。
***
「久住さん、見ましたよぉー?」
「え? 何を?」
「三枝さんとつき合ってるんですか?」
「……なんで?」
なにを見られた?
この間のあれか?
「たまたま駅前にいたんです。友達と飲んでいて。そしたら二人で手を繋ぎながら走っていくところをお見かけして、錯覚かと思って目を擦ってしまいましたよ」
「違うの、違う違う、音山さん」
「だってお二人、すごくいい雰囲気だなって思っていたんですよ。三枝さんですよ? すごすぎる。なれそめを聞きたい」
「ごめん、残念ながら違うんだよね。ほんとに。事情があって」
「音山さん~? ちょっとこれ急ぎでお願いしたいのあるんだけどいいかなー?」
「はーい!」
「あ」
行ってしまった。
音山さん、悪い子ではないんだけど、若い。思い込みが激し過ぎるから。
その後いくら言っても納得する様子はなく、別にいいやと放っておいた。
まさか三枝君本人に言い出すとは思わずに。
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