5.三枝君が王子たる所以 side K

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 栗原さんからなにか連絡がくるのではと思ったけれど、何の音沙汰もなかった。  私も何も感じていないあたりが最低なのだが、何歳になろうがもう、まぁいいかの恋愛だけは止めようと思う。  一つ一つの事に丁寧に、真剣に。三枝君の様に。彼の前で恥じない人でいたい。 *** 「久住さん、見ましたよぉー?」 「え? 何を?」 「三枝さんとつき合ってるんですか?」 「……なんで?」  なにを見られた?  この間のあれか? 「たまたま駅前にいたんです。友達と飲んでいて。そしたら二人で手を繋ぎながら走っていくところをお見かけして、錯覚かと思って目を擦ってしまいましたよ」 「違うの、違う違う、音山さん」 「だってお二人、すごくいい雰囲気だなって思っていたんですよ。三枝さんですよ? すごすぎる。なれそめを聞きたい」 「ごめん、残念ながら違うんだよね。ほんとに。事情があって」 「音山さん~? ちょっとこれ急ぎでお願いしたいのあるんだけどいいかなー?」 「はーい!」 「あ」  行ってしまった。  音山さん、悪い子ではないんだけど、若い。思い込みが激し過ぎるから。  その後いくら言っても納得する様子はなく、別にいいやと放っておいた。 まさか三枝君本人に言い出すとは思わずに。
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