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「俺ダメなの、恋愛とか全く興味ないしキライなの。だからご期待に沿えるようなことは何もないな。あー、吉川に聞いてみて? 笑うから」
言葉は柔らかいけれど、相当不機嫌になっている三枝君の姿を、直視できなかった。
「ほらね。怒られた」
「怒られてません。っていうか三枝さんはいつもああです。私空気読めなくて」
「だから言ったのに」
「あーー、やばい、また軽率なことしちゃったー。謝りたいけどもうしばらく話し掛けられない」
失敗しちゃったのはいいが、私にまでダメージを与えてくれるな。
分かっていることをはっきり言われるのも、イヤなものなのだよ。
電話でもいいから、一言謝りたくて仕方が無かった。三枝君にとっては、それすらウンザリなのかもしれない。嫌われる一方かもしれない。
「三枝君? 今大丈夫?」
「はい、どうした? 何かあった?」
「何かあったでしょ? 今日昼間」
「……ああ」
「ものすごくイヤそうなのわかったから……ごめん、私のせいで」
「久住のせいじゃないでしょ」
「どうしてそんなに女性嫌いになっちゃったの?」
「……嫌いじゃ、ないよ」
「そう? ほんとに?」
「うん」
「音山さんも、悪い人じゃないよ? 三枝君に軽率にあんなこと聞いて、悪いことしたって反省してた」
「あーそう。別にいいけど」
「……いやな思いもいっぱいしたのかもしれないけど、大丈夫だよ。きっと、三枝君にもいいことある。そういうのってご縁だしさ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、切ります……」
「ありがとう」
「え?」
「電話、ありがとう」
「……」
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