5.三枝君が王子たる所以 side K

16/16
前へ
/66ページ
次へ
「あ、そういえば岡部とこの間飲んでさ」 「えー岡部くん、元気? 懐かしい」 「いろいろ聞いたよ、昔の話」 「な、なにを?」 「お互い聞かされてたみたいよ。俺はよく久住の話聞いてた。変な人だなって」 「えっ? なに言われてたんだろ」 「だから俺あなたのこといろいろ知ってて、友達みたいな感覚だったんだ。最初から」 「それは……なんとなくわかる。だからか、岡部君の影響か。不思議だったんだ、三枝君てなぜかあまり話した事もないのに、仲が良かったって感覚があるのね、私も。……そう言われると、結構三枝君の小学生の頃の秘密とか知ってるかもしれない」 「何をどう話したんだ、あいつは」 「お互い様」 「この間のシャツさ、俺にどう考えても似合わないと思ったけど、着てみたら意外と着心地良かった」 「着てみた? わ、見たい。いや、三枝くんほど似合う人はいないのではないかと」 「爽やかすぎない?」 「爽やかじゃん」  いつでもこうして、何気ない会話を楽しめますように。  三枝君に、あいつがいれば安心と思われる存在になれますように。  正々堂々、ありがとうと言える日が来ますように。  そのためには努力を惜しみません。 王子の隣に並ぶ姫にはなれないけれど、役立たずの家来にはならない。  わたし、頑張るからね。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2209人が本棚に入れています
本棚に追加