6.はじまりのキス

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6.はじまりのキス

「いいじゃん。うん、いいね」 「ほんとに!? あーー緊張した! 良かったー。もう燃え尽きた。これでダメならと思って」 「いやいや、ここからが始まりだから。燃え尽きられても困る」  久住が、ここ最近仕事に燃えている。  彼女が担当したもので、一発でいいと思えたのは、実はこれが初めてだった。 「でも実は、方向性がわからなくて笹尾さんに相談してようやく……というか、最初はもっと独りよがりなデザインでした」 「笹尾に?」 「はい、発想が豊かで、ここの人達は本当にすごいってつくづく……勉強になります!」 「……そうか」  なんか今、笹尾じゃなくて俺に聞けよと言いたくなった。  季節は冬。  雪国に、白い季節が訪れようとしていた。 ** 「吉川さーん」 「はーい」 「俺最近なんかちょっと変かなぁ?」 「……変ですねぇ」 「やっぱり変か……。忙し過ぎて頭がおかしくなった、というよりは」 「というよりは、甘いですね、雰囲気が」  甘いというのはよくわからないけれど、  優しくなったと言われることが増えた。 「特に悪い方に変わったわけではないので、問題ありません。大丈夫」 「ああそう。それならいいや」
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