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オフィスへの出入り口付近で、コートを着込んで固まったままこちらを見つめている久住の近くまで向かう。
再会した頃のボロボロのボロからは大分見違えて、やる気が漲っている。
自信を取り戻し、本来の久住らしく生き生きとしている。
でもそんなことよりも、彼女が持つ明るくて柔らかい空気に引き寄せられている自分がいる。
「なんか、変わったな。今、いい感じだろ。久住」
「……」
「何してた? 二週間」
「普通に、仕事頑張ってた」
「そうか」
「……私は、三枝君に感謝しています」
「感謝? なにが?」
「一生懸命頑張ってもいい事なんかなにもなかった。努力は報われないって思ったし、何もできない未熟な自分が情けなくて。そんな時に三枝君に声をかけてもらって……」
「うん、あの喫茶店な?」
「神様が私にくれたご褒美だと思った。ただ同級生がボロボロで見ていられなかった、三枝君の優しさだってわかっているけど」
「そんないい話ではないよ」
「でも本当に、相当嬉しかった。……ありがとう」
「じゃあ、俺にもお返しちょうだい?」
「お返し? いいよ。私が準備出来るものなら」
「俺と一緒にいて?」
「え?」
「一緒にいませんかと言ってます」
「……それは、なに? どういう意味で」
「好きだから、だと思うんだけれど」
「……」
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