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久住が、黙ったまままた眉間にしわを寄せ、困り顔で俺を見て、首を横に振る。
やめてくれ、その顔は。
吹き出すから!
「いやいや、そんなわけは」
「なに、どんなわけだといいの?」
ほんとにこの人は、予想外の事ばかり言う。
「もう、私に都合のいいことを言う男の人は信用しないことにしたの。自分から好きだと思って、私じゃないとダメって人と一緒にいる事にしたから」
「久住、俺のこと あの浮気男と同じだと思ってんの?」
「まさか! 全然違う。だけどモテる男はダメだ。騙されるから」
ほらやっぱり。
「三枝君なんて一番ダメな人でしょ。信じちゃいけない人だ。周りには沢山女性がいるし出張も多くて、ここじゃなくて東京にも現地妻がいそうな人が」
いないいない。現地妻って、
いるわけないでしょどこにも。
「なにそれ、つまり俺とつき合っても浮気をするだろって?」
「そうだね。とりあえず私は無い。釣り合わないよ。それに私は家来であって、姫という柄では……」
「姫? 家来? 何言ってんの」
どんな男と付き合ってきたんだよ。俺なんてここ数年ずっと誰もいないから。
それに相手を信じられないっていう点においては、俺の方が勝っている。
「わかった、まぁいいや。嫌いじゃないのね? そこそこ好意はあるって事?」
「嫌いなわけあるか」
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