6.はじまりのキス

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 久住が、黙ったまままた眉間にしわを寄せ、困り顔で俺を見て、首を横に振る。  やめてくれ、その顔は。  吹き出すから! 「いやいや、そんなわけは」 「なに、どんなわけだといいの?」  ほんとにこの人は、予想外の事ばかり言う。 「もう、私に都合のいいことを言う男の人は信用しないことにしたの。自分から好きだと思って、私じゃないとダメって人と一緒にいる事にしたから」 「久住、俺のこと あの浮気男と同じだと思ってんの?」 「まさか! 全然違う。だけどモテる男はダメだ。騙されるから」  ほらやっぱり。 「三枝君なんて一番ダメな人でしょ。信じちゃいけない人だ。周りには沢山女性がいるし出張も多くて、ここじゃなくて東京にも現地妻がいそうな人が」  いないいない。現地妻って、  いるわけないでしょどこにも。 「なにそれ、つまり俺とつき合っても浮気をするだろって?」 「そうだね。とりあえず私は無い。釣り合わないよ。それに私は家来であって、姫という柄では……」 「姫? 家来? 何言ってんの」  どんな男と付き合ってきたんだよ。俺なんてここ数年ずっと誰もいないから。  それに相手を信じられないっていう点においては、俺の方が勝っている。 「わかった、まぁいいや。嫌いじゃないのね? そこそこ好意はあるって事?」 「嫌いなわけあるか」
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