6.はじまりのキス

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 この不毛な会話はどこまで続くのでしょうか。  俺はたしか、理知的で、穏やかに笑い合えるようなタイプが好きで、運命の相手は会えばすぐにピンときて、なんとなく縁があって、今は女性が苦手でもいずれ出会うんじゃないかって、どこかで夢見ていたりはしませんでしたか? こんなごつごつした歪な会話が続く恋は想像もしていなかった。 なのに。  無意識に、久住に触れていた。  髪に、頬に。 「ちょっと来て」 「え?」  久住の手を取って、腕の中に閉じ込める。  分厚い洋服に覆われて、いまいち久住の身体を感じることはできないけれど、いつの間にか覚えてしまった久住の匂い。 「理屈じゃないと思う。頭で考えて上手くいくんなら、みんなそうしてる」 「……」 「久住もわかってるはずだ」 「や、無理。心臓停まる。三枝君の隣は私は……」  こんなこと、立場が上の人間がやったら完全にセクハラで訴えられる。 けれど止めるつもりはない。 「キスしていいですか?」 「……」  いつまでその顔をしているんだか。  けど、めちゃめちゃ可愛いな。  断られないことを良い事にして、ゆっくり、おでこに、目に頬にキスをする。  嫌がっていないのを確認しつつ、最後に唇に触れる。  自分でも認めていなかった、この人が好きだという感情が一気に溢れ出す。  あーもうダメだ、完全に……  嬉しくて切なくて苦しい。  再会できたこと、出会えたことに感謝する。
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