2210人が本棚に入れています
本棚に追加
この不毛な会話はどこまで続くのでしょうか。
俺はたしか、理知的で、穏やかに笑い合えるようなタイプが好きで、運命の相手は会えばすぐにピンときて、なんとなく縁があって、今は女性が苦手でもいずれ出会うんじゃないかって、どこかで夢見ていたりはしませんでしたか? こんなごつごつした歪な会話が続く恋は想像もしていなかった。
なのに。
無意識に、久住に触れていた。
髪に、頬に。
「ちょっと来て」
「え?」
久住の手を取って、腕の中に閉じ込める。
分厚い洋服に覆われて、いまいち久住の身体を感じることはできないけれど、いつの間にか覚えてしまった久住の匂い。
「理屈じゃないと思う。頭で考えて上手くいくんなら、みんなそうしてる」
「……」
「久住もわかってるはずだ」
「や、無理。心臓停まる。三枝君の隣は私は……」
こんなこと、立場が上の人間がやったら完全にセクハラで訴えられる。
けれど止めるつもりはない。
「キスしていいですか?」
「……」
いつまでその顔をしているんだか。
けど、めちゃめちゃ可愛いな。
断られないことを良い事にして、ゆっくり、おでこに、目に頬にキスをする。
嫌がっていないのを確認しつつ、最後に唇に触れる。
自分でも認めていなかった、この人が好きだという感情が一気に溢れ出す。
あーもうダメだ、完全に……
嬉しくて切なくて苦しい。
再会できたこと、出会えたことに感謝する。
最初のコメントを投稿しよう!